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漫画『俺物語‼︎』感想

鈴木亮平がこの「俺物語‼︎」の実写化の主演に抜擢されたというニュースがあって、「天皇の料理番」で病気の兄の役を演じていたあとに100キロ近い巨漢の役をやるということでその内容よりも鈴木亮平さんの命の心配をしていたのですが、冷静に考えて原作も面白そうだなーってことで読んでみました。それで結果、すっごいイライラしました。死にたくなりました。

おそらく、いままであまりなかったタイプの少女漫画で人気が出るのはすごくわかるし、一気に読んでしまったのですごく面白かったんだけどなんだろうこの「世界はこんなにもキレイだよ」感。

まずこの漫画には基本的に「根っからの善人」しか出てこないというのが大きなポイントです。猛男も砂川も大和もまず自分の幸せより自分の大切な人達の幸せを 一番に考えるような人たちでそれがすごくイライラするのです。自分の浅はかさ、自分のクズさに。自分がどれだけくだらない人間かというのをむざむざと思い知らされました。

この漫画の主人公の「剛田猛男」は見てもわかるとおり強くて優しくて男気があって、顔(一般論)以外は男の中の男、という感じなのだけどいかんせんその外見から友達はいっぱいいるけど女子にはモテない(と、自分では思っている)という人生を歩んできていたのです。逆に友達の「砂川誠」は見てもわかるとおり顔もかっこよく、猛男のようなわかりやすい優しさではないけど、すごく気遣いのできる良いやつで絵に描いたような「女子が思う理想の男」。今まで「絵に描いたような」は餅の専売特許だと思っていたのですが、この砂川は餅以上に「絵に描いたような」という表現が似合うキャラクターです。そして、この二人は家が近所ということもありまさに「心の友」。そんなある日、二人が痴漢にあっていた「大和凛子」という女の子を助けるところから物語始まります。

よくある少女漫画のストーリーだと、この3人の三角関係がスタートし、徐々に猛男と砂川との間に亀裂が生まれていく...というのを期待していたのだがまー見事に裏切られました。なんの波乱も起きません。

最初、猛男は大和が自分よりも砂川に気があるんじゃないかと思うわけです。もちろん僕もそう思いました。そこから3人の三角関係が始まり、人間の汚い部分むき出しの真珠夫人も真っ青のドロドロ足の引っ張り合いが始まると思っていたのです。

しかし実際は違いました。猛男はなんとかして2人がうまくいくようにといろいろ気を利かせて次に会う約束なんかを大和に取りつけるのです。普段、何度も女子から告白されてるのにすべて「ダルい」という理由で断っているほどのドライボーイの砂川が大和を「あの子、いい子っぽいな」と褒めたりするので、なおさら猛男は2人が両想いなんだと思ってしまうのです。

そしてある日、猛男は「2人で話したいことがある」と大和から呼び出しを受けます。猛男は当然砂川のことを相談されるんだろうと思って「あいつはいいやつだ、オレが保証する!」と大和に言うのですが、大和は突然泣き出してしまいます。そのあと猛は砂川がなにかしたと思い、自宅に押しかけるのですが砂川は「おまえを好きだからだろ、おまえもかっこいいから」と猛男に告げるのです。大和のことをいい子だと言っていたことも「あの子はおまえを好きだって話しかしない」からだ、と言うのです。そして、砂川が今まで女子からの告白を断っていたのはカゲで猛男の悪口を言っていたからだ、と。友達の悪口を言う女とは付き合いたくない、と。

なんということでしょう、こんな高校一年生がいるでしょうか。そうしていると砂川の家に大和がやってきます。砂川の計らいもあり猛男と大和はお互いの気持ちを伝えることができ、交際がスタートするのです。後日、大和は砂川にお礼のケーキを渡し、友達を紹介してあげようとするのですが「オレは幸せなおまえ(猛男)を見てるほうがいいから」とガチホモ発言とも取られかねないことをサラリと言ってのけるのです。これには色んな意味で鳥肌が立ってしまいました。そうなのです、この「俺物語‼︎」は猛男と大和の恋物語ではなく、猛男と砂川の友情物語だったのです。

 

ということは、僕はこれから「この女はなにか別の目的があって猛男と付き合っている、いつかシッポをみせるはずだ。そのことで猛がボロボロにされ、そのことで猛男と砂川の友情はまた深まっていくという展開になる」とワクワクして読み進めていたのですが、まるでそんなことはありませんでした。ずーっと2人はラブラブなのです。なんの障害もないのです。この彼女の大和凛子もゲロ吐くほどいい子なのです。いい子すぎて、かわいすぎて、人間味が全く感じられないのです。だから僕はこの「大和凛子」は嫌いです。

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4巻でようやく「恋のライバル」とも言うべき女子「西城」が登場します。はじめに言うと僕は俄然西城さん派なのです。体育祭で彼女は足の速い女子の代わりにリレーの選手に選ばれてしまいます。西城は走るのが得意ではなく、それがコンプレックスだったのですが猛男はそんな西城に走り方を教えてあげるのです。そうして猛男と毎日練習を重ねることで、少しづつ猛男の優しさに気づき惹かれていくのです。そして体育祭でぶっちぎりで走る猛男の姿を見て完全に惚れてしまいます。それから西城さんはなにかと猛男と関わろうとします。一方、それに少しの不安を覚えた大和は猛におそろいのケータイストラップをプレゼントして「私のもの」アピールをします。

「グフフフフ、ここまでの生ぬるい展開はすべてこのためのものだった。ここから猫のゲロよりも汚い三角関係が始まるのだ...!」

そんな期待を胸に膨らませ、読み進めていたのですが皆さんもうすうす感づいているとおりまったくそんなことにはなりません。西城さんははじめ、猛男のことを「人間として好き。師匠って呼んでいい?」と今どき小学生でも言わないようなことを言い出します。こうして師弟関係になった2人は次の土曜日に砂川と大和の4人で大学の学園祭に行きます。「ここから足の引っ張り合いが...」という僕のサガミオリジナルよりも薄い期待は西城さんと大和が「2人で楽しく猛男の好きなところを語り合う」というシーンに砕かれました。その後、西城さんは砂川から背中を押されて猛男に告白するのですが、猛男は当然断ります。西城さんに告白されたことで自分の大和に対する気持ちを再確認した猛男は、大和に西城さんから告白されたこと、断ったこと、他の女子とは絶対付き合ったりしないこと、を大和に告げます。こうして2人の絆はより深まっていくのでした。は?

一方、西城さんも「これからも師匠って呼んでいい?」と「友達」として猛男とつきあっていくとことを決めるのです。かわいい。それを見ていた砂川から「西城さんと他人になるのは寂しいって昨日寝ないで悩んでたから猛男嬉しかったと思う」と告げられ、西城さんの最高の笑顔でこの話は終わります。かわいい。

「と、ということは西城さんと砂川の恋物語がここからはじまるのか、もう楽しみはそれくらいだ...」

 

...結論から言えばもう西城さんはほとんど登場しません(7巻時点)それどころか砂川に心を寄せる根暗メガネちゃんという新キャラクターまで登場してしまいます。

西城さんなきいま、僕はこの漫画にもう希望を見出すことはできません。この漫画を読み進めるたび、打算的に生きている自分に絶望するのです。洗ってない犬より汚い自分の心を恥じるのです。残る楽しみといえば、猛男と大和のシャボン玉のような背景描写でフェードアウトするベッドシーンだけです。ただ、この続きを読むメンタルは僕にはもう残されていないかもしれません。でも、作者のアルコさん、河原和音さんには西城さんの幸せだけはきっちり描いてもらいたいです。

いろいろ書きましたが、たまにはこんな平和な漫画があってもいいんじゃないかと思います。それでは最後に西城さんの幸せと鈴木亮平さんの健康を願って、西城さんの最高の笑顔のページでお別れしたいと思います。

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