お題「心霊」
あれは、二十歳くらいの頃の話だった。
成人したての僕はといえば、当時、背伸びして彼女が欲しかったと思うが、とても仲良くしていた女の子がいたと記憶している、その女の子はとても可愛らしい顔をしていて、特にその女の子は鼻が高く、一緒にいる僕はとても鼻が高かったのだ。
あくる日、僕は彼女に話があると言って呼び出されることがあった。呼び出された場所というのは公園で当時、その公園は昔からあり、さみしげな面影を残していた。
僕がその公園場所に到着すると、するとそこに女の子がいた。彼女の話、というのは、もちろん僕のことが好きだという話であり、もちろん突然のことに僕は戸惑いを禁じ得なかったのも事実ではあるのだが、当事者の僕はもちろんその彼女のそれらの問いかけに対して全て「オーケーサイン」を出したのだった。
こうして、僕と、彼女との交際が始まることとなるが、それはまた先の話。
始めは、友達から恋人への変化の機微からか、当初はどこかぎこちない二人ではあったのだが、徐々に周りからは「友達」から「恋人」と呼ばれるようになる。そして、最初に僕らはお互いを名前で呼び合うことを決めた。
これが初めて二人で決めたルール、のようなものだ。その名前を口にするたびに、少し照れたような表情を女の子は見せて、少し微笑む僕。
早速ではあるが、その次の日、僕はその彼女とデートの約束を取り付けていた。街だ。朝の早くからの時間に待ち合わせを済ませ、僕は女の子を待った。
女の子が来るやいなや、僕たちは映画館へと足早に足を運んだ。古いフランス映画だったのだろう、映画の冒頭で女の子は途中で眠ってしまっていた。無理もない、と思った。
古いフランス映画を観たあとは、昼食を食べたいと彼女が思い、それに僕は応じた。そして前々から女の子が行きたいと願っていた例のスパゲティ屋へと向かい、入店した。
入ると少し小太りの店員がやって来て「ご注文は」と注文を聞かれた。注文を済ませ、僕らはしばしの雑談に興じた。子供の頃の話、趣味の話、将来の話などの雑談をした。 ハハハ、と笑う空間。
その、程なくして先程、注文を済ませたスパゲティとサラダが運ばれてきたので、僕たちは雑談を終わらせ食事を、楽しんだ。それらを女の子が「おいしい」と言ったので、僕もフォークをスパゲティに巻きつけながら「うまい」と言った。時間にして20分ほどだろうか。フォークを食べ終えた僕らは、店をあとにするのだった。
スパゲティ屋を出てしばらくすると彼女が買い物をしたいと言うので僕も買い物についていくことにした。しばらくは、彼女の買いたいものを買い、見たいものを見てそれに付き合った。
ふと辺りを見渡すと街はもうすっかり影を落としていた。そんな街並みを見て僕は、ふと女の子を家まで送り届けようと思った。
そんな僕の様子を見て、彼女は「まだ帰りたく内容」と言ったので、僕もそんな彼女を見てもちろんまだ帰りたくなかった。
行く当てもなく、歩き続けた先に僕らの足は自然とあの公園へと足を運んでいた。
公園へと着くやいなや、無邪気にブランコを漕いで遊ぶ女の子を見ながら、僕は上着のポッケからタバコを取り出し、1本のタバコを取り出し、タバコに火をつけた。
しばらくすると、僕の肩に寄りかかり眠る彼女がいた。彼女は一日中動き回り、疲れたのだろう、そして僕はそっと女の子を抱き寄せた。そして、そのとき着ていた山吹色のコートを女の子の肩に羽織った。
そして街灯だけが照らす公園で3人、得てして幸せとは、こういうことを言うのだろう、そう僕は言った。
しがなくして彼女はフッと消えた。
参考文献