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映画『予告犯』感想

映画『予告犯』

社会に巣食うクズ共に謎の動画投稿者『シンブンシ』が次々と制裁を下す!敏腕女性警察官・吉野との息をもつかせぬ壮絶な頭脳戦!正義とは?悪とは?ソーシャルネットワークがコミュニケーションの主流となっている現代に対して、強烈な社会的メッセージが込められたクライム・サスペンスがここに爆誕!

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という期待をかけて観ると肩透かしを喰らうので一回忘れましょう。

いや、厳密に言えば序盤はそんなテンションで観ても全く問題ないのですが終盤この映画はガラリと毛色を変えます。『シンブンシ』と呼ばれるテロリスト集団、ゲイツ、カンサイ、メタボ、ノビタの四人は「ある目的」のために予告犯行を繰り返しますが、そこに大きなメッセージは無いのです。あらすじを読むと誰もが予想するであろう「社会への不満」や「特定の誰かへの復讐」を連想させがちですが、それは「目的」を果たすための一つのファクターに過ぎない。むかつく奴らを成敗!月に代わっておシゴき!爽快エンターテイメント、ノンストップ!サスペンスアクション!というよりはひとつのヒューマンドラマとして観たほうが楽しめる気がする。例えば『ドラえもん』の映画って戦闘描写があるけどまさかあれをアクション映画として観る人はいないじゃないですか。それに近いかもしれません。

とりあえず、メインキャストの演技はどれも本当に素晴らしかった。主人公・ゲイツ役の生田斗真の最近のあのいるだけで安心する感じ、彼が出てるだけでその作品が成立してしまう圧倒的な存在感はなんなんだろう。正直『イケメン♂パラダイス』のときはめっちゃ舐めてたんですけど、それこそ『僕等がいた』『脳男』くらいからの生田斗真は完全に確変入ってます。今回の『予告犯』も序盤の派遣SE時代の冴えなさとか、役ごとにあれだけガラリと雰囲気を変えられる役者もそう多くはないと思いました。

あとやっぱり個人的に大好きなのが荒川良々(あらかわよしよし)で、まずなにこの名前!良々(よしよし)って!可愛すぎる!もうずっと名前を読んでいたくなる愛らしさ!良々!よしよし!良々!よしよし!良々!よしよし!良々!よし!絶対ハムスター飼ったら良々にしよう!っていうくらい好きな名前で、そしてそんな彼の名前に決して負けない一度目にしたら忘れられない演技!個性のカタマリ!もう彼がいるだけでどんなシリアスな場面でも緩急が生まれるというか、一気に親近感が沸くんですよね。グッと鑑賞者との距離が近くなるというか。「もう、ホントにしょうがないなぁ」って気分になります。

この二人に比べたら戸田恵梨香も鈴木亮平も濱田岳もそこまでキャラが立ってたというわけではなかったけど、役割的なことを考えたらそこまで目立たなくても十分存在感を出していたし特にノビタ役の濱田岳は自分達のやってることに対する後悔とか恐怖を一番感じていて一番リアルな役どころでした。

脇役も使い方がすごい贅沢で、窪田正孝とか田中圭とかまぁ彼らである必要は無かった気がしないでもないのですが、鑑賞者に「なにかあるな...」含みを持たせるにはうってつけなキャスティング。あと滝藤賢一は、がなる役を演じれば今彼の右に出る俳優はいないんじゃないでしょうか、彼があの役を演じるだけで僕達をゲイツに感情移入させるには十分。

そして、兎にも角にも全ての真実が明らかになる「終盤の20分」が本当に素晴らしくて特にラストシーンなんかは、確かに彼ら『シンブンシ』が悪いことしてるのは事実なんですけど思わず「悪くない、君たちはなんにも悪くない...誰が君達を責められる?いいや誰も責めることはできない...」と涙ボロボロ流しながら呟いてしまいました。観終わった後、ゲイツを、カンサイを、メタボを、ノビタを、そして世界を抱きしめたくなります。「外は寒かったでしょう...?さ、暖かい布団にお入り?」という気分になるでしょう。

そんな今年一番優しい映画『予告犯』でした。

 

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