先日、テレビで耳鼻科の医師が「耳かきはしなくてもいいんですよ」というような発言をしていた。
「ブチッ」
その瞬間、自分の中でなにかが切れる音がし、気づけばテレビの液晶を殴り割っていた。
ふと我に返り、バッキバキになって8割見えなくなったテレビでその放送の続きを鑑賞したが、その医師が話していることは俺の耳にはまったく届かなかった。
「普段生活しているなかで、耳垢というものは自然と落ちるものだから耳かきはしなくてもいいんですよ、気持ち良いかもしれませんが、過剰な耳かきは逆に耳の中を傷つけてしまうことにもなり、大変危険なんです。どうしてもやりたいという場合は入口や耳周りをチョイチョイとする程度で十分なんです」
なんだ、こいつは。こいつは一体なにを言っている。その瞬間、頭が真っ白になりまたテレビの液晶を殴り割っていた。
「耳かきは、しなくてもいい?」
こいつはなにもわかっちゃいねぇ。「しなくていい」だと?医者というのは「病を治す」という一点にばかり捕らわれて人として大事なものが薄れてしまっているんじゃねえのか。俺たちが耳かきをする理由は「耳の中を綺麗にしたいから」じゃねぇ。「気持ち良いから」なんだよ。
じゃあ、聞くが。
お前はオナニーしないんだな?
コスりすぎて「性器を傷つけてしまうかもしれない」からしないんだな?
したとしても先っぽをチョイチョイとする程度なんだな?
セックスも子供を作るって理由以外はしないんだな?しないんだな?
過度なセックスは「性器を傷つけてしまうかもしれない」からしないんだな?
子供を作るためだけにセックスすんのか?違うだろ。
「気持ち良い」からだろうが。
「気持ち良いかもしれませんが危険なのでやめてください」だ?
そんな簡単に気持ち良いことをやめられるほどな、人間利口にできちゃいねぇんだよ。
単純な損得だけで人間が生きてると思ったら大間違いなんだよ、なんの得にもなりゃしないことの先に本当の幸せが転がっているんだよ。
そんな当たり前なこともわからねぇで、なにが「医者」だよ。
いまこうやって文章を書いてる最中もな、俺は耳かきしてるんだよ。
子供の頃からな、血が出るまで耳かきするっていうのが癖なんだよ。
耳から出た血を見るたびに思うんだよ。
「もうやめたい、もうやめたい、どうして私だけが…」ってな。
でもやめられねぇんだよ、気がついたら綿棒で耳の奥をほじくってる自分がいるんだよ。
耳かきを1日でもしないと、全身が震えて汗が止まらねぇんだよ。
耳かきをしないと、怖くて眠れねぇんだよ。
先生、助けてくれよ…
耳かきやめますか、それとも人間やめますか…