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今のわれわれには「いたしません」が足りない

今のわれわれには「いたしません」が足りない。

そんなことをドラマ『ドクターX ~外科医・大門未知子~』を観て思った。米倉涼子演じる・大門未知子がその天才的なスキルで次々と難しい手術を成功させていくという痛快医療ドラマで、彼女は群れや組織を嫌い、特定の病院に属さないフリーランスの外科医。それ故に医師免許がなくてもできる全てのことを「いたしません」と一蹴する。

例えば、

  • 教授の研究のお手伝い、いたしません
  • 論文の下調べ、いたしません
  • 院長回診・教授回診、いたしません
  • 学会のお供、いたしません
  • ゴルフの送り迎え、いたしません
  • 愛人の隠蔽工作、いたしません
  • 飲み会のおつきあい、いたしません

というような内容が書かれた契約書を全員に渡し復唱させるといったシーンもある。

そして、難しい手術を独断で行い、内科部長や副病院長に「勝手なことをするな!できるわけがない!」と止められても「私、失敗しないので」とまた一蹴。

大門未知子は、たとえ未経験の手術であったとしても「私、失敗しないので」と口にする。これは単に自分自身の能力に溺れたビッグマウスだからではない。こう言い切ることで自らの退路を断ち、自分自身にあえてプレッシャーをかけ続けることで常に100%の力を発揮するためだ。

有言実行、大門未知子は手術を難なく成功させる。そして、患者の肩に手を当て言葉を残し、さっそうと手術室をあとにする。

「かっ、かっこいいいいい〜〜〜」

ここで視聴者はカタルシスを得る、というどこか水戸黄門や半沢直樹などにも似たシンプルな作りのドラマだ。

この『ドクターX ~外科医・大門未知子~』は最近のドラマの中だとべらぼうに視聴率が高い。これはなぜかと考えた時、冒頭の「今のわれわれには「いたしません」が足りない」というところに行きつく。

世間体や体裁を気にするがあまり、やりたくないことをやり、下げたくない頭を下げる。でも生きていくためにはそうしなきゃいけないじゃないか。でも…言いたいことも言えないこんな世の中じゃ…みな心の中でそういった葛藤があるからこそ、このドラマはこんなにも多くの人の心を打つのではないのだろうか。

どこかの組織に属している以上、100パーセント大門未知子のように生きるのは難しいかもしれない。でも、時には自分の心のまま正直に、「いたしません」とノーを突きつけてみてもいいんじゃないのだろうか。

 

そして昨日、俺は大門未知子になった。

 

「先輩。資料、できました」

「おお、やけに早いな。ちゃんと間違いないかチェックした?」

「してないです」

「いや、しろよ。なんでやらないんだよ」

「いたしません」

「は?」

「失敗しないので」

「は?」

「私、失敗しないので」

「いや、お前この前めちゃくちゃミスしてたじゃねーかよ」

「…え…いや…それは」

「だめだ。お前のためにならないから。チェックしなおし。」

「いた…はい…すみませんでした…」

 

…晶さん助けて。

 

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