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吉澤嘉代子を聴いてたら昭和と平成のはざまに迷い込んで出てこれなくなった

東京絶景(初回限定盤)(DVD付)

「吉澤嘉代子」を初めて知ったのは5年くらい前にラジオで『美少女』って曲がかかってて、なんかコッテコテの歌謡曲チックのメロディで、

「いつの時代の曲………??作曲誰だこれ…大滝詠一……?」

って思って調べたらゴリゴリのド新人のド新曲で、聴いてるうちになんか気がついたら平成と昭和のはざまに飛ばされてた、っていうのが出会いです。その次に聴いたのが「毛」をひたすら愛でる『ケケケ』ってトチ狂った曲で、脳がバグってきて「なんだこいつ……」ってジョイマン池谷になってたら、その次の「東京絶景」「泣き虫ジュゴン」よ…。息呑みすぎて肺爆発するくらい美しいメロと声、もう頭おかしくなるかと思った。

 

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吉澤嘉代子、ここまで掴みどころのないシンガーソングライターはいないんじゃないでしょうか。昭和歌謡の女帝みたいな声で歌ったかと思えば、平成10年代生まれなんかってくらいなんの穢れもしらない少女の声で歌ってる。その緩急がアルバム単位、曲単位、いや秒単位で目まぐるしく変わる。なんか吉澤嘉代子って歌声グニャグニャしててすごい。ニンテンドー64『超空間ナイター プロ野球キング』の高津のシンカー。高音出すときなのか、しゃくりあげるときたまに声が上ずるんですけど、山本リンダかよみたいなときありますからね。って思ってたら2秒後、ちっっっちゃぁ〜〜〜〜〜な子猫の声で歌いやがる。

例えば、関ジャムで紹介されて一気に認知度上げた『残ってる』って曲で言えば、

 

Aメロ「改札はぁよそよそしい顔でぇ〜」

 

んとこの声を耳に残した状態からの、

 

2番Bメロ「私の火はァアアっっ!!のォオオオろォオオしを上げぇぇえてっ……」

 

なに???声帯何個あるの吉澤嘉代子???たぶん7個くらいあるだろ。ヤマタノオロチソングライターって呼ばせてほしい。このね、この声の緩急が「はじめての朝帰り」を終えて無垢な少女から大人の女になっていく主人公の成長と心の変化を表現してるんじゃねぇかって(以下8000字省略)

 

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しかもさらにおっっそろしいのが、この吉澤嘉代子、素の声がゲボほど天使でございます。ラジオとか聴くと、その素の声にさらにや(殺)られます。ただただ死ねる。完全に心臓握りつぶされてなくなります。

トークを聴くとわかるように、このミステリスとピュテリアス(ピュアの最上級)の二面性こそが吉澤嘉代子の魅力であり魔力。独特で、どこか人を寄せつけないような雰囲気や考え方を持ちつつも、根っこにあるものは透明が裸足で逃げ出すほどの透明。だから吉澤嘉代子って人間を知ろうとすればするほどわからなくなるし、そのたびにもっと知りたいって思う。

 

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そして、吉澤嘉代子のメロディと声の振幅を倍増させてるのが、歌詞。吉岡里帆のラジオ『UR LIFESTYLE COLLEGE』にゲストで出たとき、

「最初から主人公や物語を設定して書いていて、主人公像や好きな言葉を集めてモチーフを作り出す」

って話してたように、どんな曲もその曲の主人公の物語として聴くことができるんですね。吉岡里帆もポルノ女優を題材にした曲『女優』の話から「曲を聴くたびにどんどん物語が膨らんでいって、どんな娘なんだろうって思って、この娘の生活ってどんな感じなんだろうとか考える」って言ってたように、1曲4分の短いメロディと歌詞のなかに登場する女の子達がたしかにそこに生きてる。

「ああ…この曲のこの娘は夜型人間で甘い物とネコが大好きなんだろうな…、この娘はきっと日本酒とかガンガン飲めるんだろうな…」

みたいな、曲のなかで具体的な描写はそれほど多くなくても主人公がどんな人間なのか深く知りたくなる、それくらい吉澤嘉代子が創り出した世界の実在感がえげつないんすよ。それこそ『女優』のAメロ、

左右非対称の目が色っぽいなんて言うから 吸いよせられるように恋に落ちていた

ここさぁ…これいつ言われてんだって思ったら、だって主人公P女優だろ……これ、絶対撮影中に言われてんですよ…。なんなら冒頭5分のあの誰も見ねぇインタビューのときに言われてる…。でも彼女はそんな男優かカメラマンか監督だかの業務的に軽く放ったその一言で恋に落ちちゃうんだよ…。それで、自分を騙しながら、嘘を知らないフリしながら、それでも側にいたいって女優続けるんすよ……。

はぁ…?こ、こんな切ないこと……あるか…??ねぇよ……。ああ…???この時点でもう2億回聴くまでこの世界から出てこれなくなる。

 

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吉澤嘉代子の曲聴いてると、昭和と平成を行き来する変幻自在の声とメロディが合わさってそのストーリーにより深みと濃さが生まれて「4分で20年分の自伝読んだ」みたいな感覚になる。

この虚像を実像にする力、フワフワしてつかみどころのない言動、でも奥に確かに感じるドッシリとした芯……これ誰かに似てんな…って思ったら、吉澤嘉代子ね、あの、「ククリ」なんですね。『魔法陣グルグル』のククリなんですよ吉澤嘉代子って。なんか小っちゃいころ実際に魔女修行してたらしいしな吉澤嘉代子…。あれ?これククリじゃね…?目ん玉ついてる杖がギターに変わっただけ。

 

…もう……曲に出てくる女子も吉澤嘉代子も…全員大好きだ……。ぜってー守り抜く。決めた、俺、ニケになるわ。まあ、どっちかっていうとキタキタおやじの側に片足突っ込んでるんですけど。死にたい。