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サカナクション『陽炎』の「カァ゛ァ゛ゲロォッ!カァ゛ァ゛ア゛ア゛ロォッッ!!」の中毒性についての論文

サカナクション『陽炎』の「カァ゛ァ゛ゲロォッ!カァ゛ァ゛ア゛ア゛ロォッッ!!」の中毒性についての論文。

 


映画「曇天に笑う」曇天ダンス~D.D~ サカナクション/陽炎

 

まずはサビの歌詞をご覧いただきたい。

 

オッオー

うぃきになっくとっりとーいくれなーい

いつになっくあっおーるくれなーーい

いつになっくないてーるよーだ

 

カァァゲロォッッ!

カァ゛ァ゛ゲロォッ!!

 

ギヴィノ

 

いきになっくわーよるはこなーい

いつになっくあっおーるくれなーーい

いつになっくないてーるよーだ

 

カァ゛ァ゛ァ゛ゲロォッッ!!

カァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ゲロォッッッ!!!

 

なんでしょうかこれは

 

これまでのサカナクションのイメージとは一線を画する異常なほどの「がなり」であり「こぶし」

 

「カァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ゲロォッッッ!!!」

 

なんでしょうかこれは

 

今回はこの「カァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ゲロォッッッ!!!」が、なぜこれほどまでにがなる必要があるのか、そしてなぜこんなにも絶対的な中毒性を持つのか、そこに迫っていきます。

 

「カァ゛ァ゛ァ゛ゲロォッッ!!」の前戯「あがァ゛い!」

「カァ゛ァ゛ァ゛ゲロォッッ!!!」ばかりに耳がいきがちですが、実はサビ前「赤い空を僕は待った」の

「あがァ゛い!」

で一回軽くイッている。この「あがァ゛い!」がのちの「カァ゛ァ゛ァ゛ゲロォッッ!!!」をさらに引き立たせているのです。

「あがァ゛い!」の時点でリスナーは「ビクッ…!えっ…?一郎くん…ど、どうしちゃったの…?」と普段はオクテな彼が急に男見せてきたみたいな強引な振る舞いに耳が吊り橋効果にやられ、

「こ…これから私…どうなっちゃうの〜〜…??」

と、サビで自分がめちゃくちゃにされる姿を期待せずにはいられなくなる、これが山口一郎が生み出した「あがァ゛い!理論」です。

 

「カァ゛ァ゛ゲロォッ!!」のあとになんか言ってる

曲中、「陽炎」というワードはアルバム『834.194』のバージョンでは合計「10回」登場するのですが、2回目、6回目、8回目の「カァ゛ァ゛ゲロォッ!!」のあとに「ギヴィノ」なのか「ヒウィノ」なのか「ゲリィロ」なのか…とにかくなにか言ってる。(ここでは「ギヴィノ」とする)

歌詞を見ても「カァァゲロォッッ!カァ゛ァ゛ゲロォッ!!」の後は「一気に泣くわ夜はこない」なのに、明らかに手前で「ギヴィノ」と言っています。歌詞にない歌詞。

 

 これが幻の「ギヴィノ」

 

「ギヴィノ」はいわば「架け橋」であり「のりしろ」。仮に「ギヴィノ」がなかった場合、サビとサビとのあいだに一瞬の空白ができてしまいツギハギ感が生まれてしまう。しかし「ギヴィノ」を挟むことでなんの違和感もなくスムーズに次サビに移ることができるのです。

それだけではない。あれだけ「カァァゲロォッッ!カァ゛ァ゛ゲロォッ!!」とがなった手前、同じテンションで「いきになっくわーよるはこなーい」と普通に歌うのはいくら山口一郎先生といえど難しい。しかし、そこに「ギヴィノ」があることでサウナ後の水風呂感覚で昇っていた血がスーッと下がりフラットな状態に戻すことができる。これぞサカナクションが生み出した「ギヴィノマジック」なのです。

 

「カァ゛ァ゛ゲロォッ!カァ゛ァ゛ア゛ア゛ゲロォッッ!!」後、急に素に戻る

これは「カァ゛ァ゛ゲロォッ!!ギヴィノ」にも通じる部分で、1サビ「カァ゛ァ゛ゲロォッッ!!カァ゛ァ゛ゲロォッッッッッ!!!」後、スンて音が止んだかと思ったら急に「まちはしずかぁーー(ポォーーーーーーーーン)」といつものテンションで歌い出す山口一郎大先生。このテンションの高低差も中毒性を生み出す要素のひとつなのです。

「は?なにが『まちはしずかぁーー(ポォーーーーーーーーン)』だ、ふざけるな。あんなに騒いでたのに急に素に戻って『どうしました?なんかありました?』みたいな顔してもダメだから『カァ゛ァ゛ゲロォッ!』って言った事実は消せないから…ねぇ…お願い…はやく次の『カァ゛ァ゛ゲロォッッッッッ!!!』をちょうだい…ワン!ワン!アッアッ!キャイイイィイィン!!アォーーーーーン!!と『カァ゛ァ゛ゲロォッッッッッ!!!』をほしがる犬になってしまうのです。

 

同じ「カァ゛ァ゛ゲロォッッ!!」はない

「カァ゛ァ゛ゲロォッッ!!」の最も恐ろしい部分、山口一郎師匠は一度も同じ「カァ゛ァ゛ゲロォッッ!!」を使っていないという所にあります。(ちなみに記事タイトルの「カァ゛ァ゛ゲロォッッ!カァ゛ァ゛ア゛ア゛ゲロォッッ!!」は1サビ部分3回目4回目の「陽炎」)

まず、1回目の「陽炎」は「ァ」に濁点がつかないフラットな「カァァゲロォッッ!!」、2回目の「陽炎」は「カァ゛ァ゛ゲロォッ!!!」で「ギヴィノ…」とセットになっているため、語尾を短く切った「陽炎」になっています。

3回目の「陽炎」は1回目よりもがなりが増し巻き舌気味の「カァ゛ァ゛ゲロォッッ!」、4回目の「陽炎」は前3回よりも伸ばした「カァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ゲロォッッ!!」

ラスサビ前5回目と6回目の「陽炎」はmovie versionではなかった1分の前奏が加わりタメにタメた最大がなりの「カア゛ア゛ゲロォッッ!!!カア゛ア゛ア゛ア゛ゲロォッッ!!!!」(「ア゛」が最も強調されている「陽炎」)

ラスサビ7回目の「陽炎」は1回目の「陽炎」と違い「ァ」に濁点がついた「カァ゛ァ゛ゲロォッッ!!」8回目の「陽炎」は2回目の「陽炎」よりも「カァ゛ァ゛ァ゛ゲロォッ!!!」と「ァ゛」を伸ばして歌う。

9回目の「陽炎」は4回目の「カァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ゲロォッッッ!!」と5回目の「カァ゛ァ゛ゲロォッッ!!」が混ざったような激しい「カァ゛ア゛ア゛ゲロォッッ!!!」、そしてラスト10回目の「陽炎」は意外にもあっさりとした余韻を残すような「カァゲロォォォッ…!!」で曲が持つ儚さ「儚なクション」を際立たせているのです。

 

「カァァゲロォッッ!!」

「カァ゛ァ゛ゲロォッ!!!」

「カァ゛ァ゛ゲロォッッ!」

「カァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ゲロォッッ!!」

「カア゛ア゛ゲロォッッ!!!」

「カア゛ア゛ア゛ア゛ゲロォッッ!!!!」

「カァ゛ァ゛ゲロォッッ!!」

「カァ゛ァ゛ァ゛ゲロォッ!!!」

「カァ゛ア゛ア゛ゲロォッッ!!!」

「カァゲロォォォッ…!!」

 

おわかりでしょうか

 

“昨日と同じ今日がないように、この世にひとつとして同じ「カァ゛ァ゛ゲロォッッ!!」はない”  

 

この「カァ゛ァ゛ゲロォッッ!!」の歌い分け、一聴だけでは気づきにくい微妙な変化も中毒性の一因となっているのです。

 

5音で構成されたメロディと「カァ゛ァ゛ァ゛ゲロォッッ!!」の関係性

最後に5音で構成されたメロディと「カァ゛ァ゛ァ゛ゲロォッッ!!」の関係性についての見解をこの論文の締めとさせていただきます。

いつかの『関ジャム 完全燃SHOW』で音楽プロデューサーの蔦谷好位置が『陽炎』について、

「この曲のメロディーは最初から最後まで5つの音しか使われてない、その中でいかに人の耳に残るかに挑戦した怪曲」

と言っていました。ちなみにこの理論は彼が言うよりもずいぶんと前に私は発見していたのですが、そう、5つしか音がないということは逆を言えば1つ1つの仕掛けが際立つということ。

だからこそ、これらの要素が絶妙に絡み合い、仕掛けの1つでもある山口一郎絶対神の歌う「カァ゛ァ゛ァ゛ゲロォッッ!!!」が絶対的な中毒性を生み出しているのではないかと、

私は、

お゛も゛っ゛た゛ッッッ!!お゛ぉ゛ぉ゛も゛っ゛た゛ ッッッッ!!ギヴィノ

 

陽炎

陽炎