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読むコカイン漫画『夢中さ、きみに。』感想

こんなに中毒性のある漫画を俺は他に知りません。

 

和山まや先生の『夢中さ、きみに。』全8話、前半4話は掴みどころがなくちょっと変な男子高校生「林」の日常を、後半4話は学校一の嫌われ者「二階堂」の日常を描いている1話完結型の作品。

和山先生の描く絵はどこか懐かしく、コミカルかつシュールなギャグの数々に嫌味なくクスッと笑える。それでいて、何気ない日常の1ページを切り取ったような世界観とほんわかした登場人物たちの雰囲気に心臓の上のほうがギュッとして切なくなる。ギャグ漫画のようでいて、その枠にとどまらない繊細な台詞回しと行間の機微、細かいディテールがただの「現実」で、他の登場人物はもちろん、林や二階堂もたしかに変わっているのだけど「いる感」がすさまじく、読んでいると自分の青春のなかにも林が、二階堂が存在していたかのような、そんな錯覚すら覚える。こわい。

 

前半に登場する「林」は意味もなく学校の階段の段数を数えたり、教室のベランダで干し芋を作ってたり、と「ちょっと頭のおかしいことをマジな顔でする」のだが、うすた京介、野中英次に通じるシュールイズムをビンビンに感じてしまい、笑いながらなぜか泣いた。

しかも、細部の至るところに小ネタが仕込まれていて、『友達になってくれませんか』で松屋がコマのフチを掴んでいたり左端に足をかけて踏ん張っていたり、『描く派』で完成した干し芋を飛んできたハトに食わせてハトが次のページに吐き出していたり、芸が異常に細かい。だから流し読みじゃなくじっくり時間をかけて1コマ1コマの隅々まで読みたくなるし、物語を最後まで進めることで回収される小さな伏線がいくつもあるので、何度も何度も読み返したくなる魔力がこの漫画にはある。現代の魔導書。

 

後半の『となりの二階堂』は、いつも不気味なオーラを纏い人を遠ざけている男子高校生「二階堂」と、運悪く二階堂と席が前後になってしまった「目高」との友情?を描いた作品でこれも最高の名作。

二階堂がそんな人間になってしまったのには「ある理由」があってそれを目高が知ったことから物語が動き出すのだが、2人の距離が縮まっていくまでの過程がとても緻密で、それまではまったく関わりのなかったハズの2人が実は深いところで繋がっていてある意味「必然の出会い」だったのだが、それをお互いがすべて共有していないというところが本当に面白い。二階堂が気になる目高と目高が気になる二階堂、2人の想いはそれぞれ違っても気持ちは少しずつ惹かれ合っていく、この過程がどうしようもなく愛おしい。地球、抱きしめたい。

 

そしてこの作品の最もおそるべき点、それは絶妙な「おあずけ」にあります。4話ずつ、林も二階堂もその人となりがわかってきて「あーもう好き」ってなる絶妙なタイミングでのおあずけ、えっえっ…もう終わり…?つ、つづきは…?どこでやってますか?いくら払えばいいですか…?で、できれば、というか絶対イブニングで毎週連載して……お願い…そう発狂するほどに林を、二階堂を欲する自分になってしまうのです。

どうしようもない渇望感。ほしい、もっとほしい。もっともっと彼らの日常を、ちょっと不気味だけどどこかかわいくてあったかくて切ない、そんな日常を、高校生活を、もっと読みたい。10、100いや1兆話読みたい……。

 

一度知ってしまったら彼らなしにはもう満足できない…正気でいられない…そんな身体にさせられてしまいました。読むコカイン『夢中さ、きみに。』ぜひ一読ください。

 

夢中さ、きみに。 (ビームコミックス)

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