いつもはオッシャレーな美容室でキッチリ髪切ってもらうんですが、急きょ人と会うのにどうしても時間がなくてスーパー西友に入ってる千円カットの床屋「QBカット」に行った。
入り口すぐのところに券売機があって、そこに金入れると出てくるチケットと引き換えに髪を切ってもらうシステム。美容室の会計の時間がグダグダ長くて嫌だったので結構良いな、なんて思いながら待合スペースの椅子に腰掛ける。飛び込みでもほとんど待つことなく俺の番に。
「千円カット」というものに対してどうしても「速く安いが雑」のイメージしかなく、
「ブラックジャックの美容師バージョンみたいな美容業界から追放されたヤバい奴が働いてんじゃねぇだろうな…」
と、ビクビクしながらイスの前にいくと、んま〜〜〜優しそうなお兄さん。開口一番、
「本日はご来店…誠にありがとうございます…わたくし、カットを担当させていただきます…〇〇と申します…どうぞよろしくお願いいたします…」
…すっっっごい丁寧な挨拶……え…?前職は執事さんですか…?ちびまる子ちゃんのヒデじい…?ってくらいに完璧な日本語かましてきて…
「こちらにおかけ下さいませ…よろしければお荷物お預かりいたします…」
俺が行ってる美容室の担当なんてもう接客マナーとかグダグダになってイトコみたいなノリで話しかけてくるし、荷物とかもはや自分でよくわからん木のカゴにぶん投げてんのに…
こ…これが接客…完璧を絵に描いたような対応にさっきまでの不安がウソのよう…
しかもそれだけじゃない…簡単に「どう切ってほしいか」の説明だけしてカットが始まるんですが、ウワサには聞いてたけどマジでロボットかってくらい全然しゃべんない…
「前髪は眉毛より上でよろしいですか…?」
「耳は出しますか…?」
と、最低限の確認はされるが、美容師野郎どもの「僕、最近休みの日とかスノボ行ってるんすけど〜〜〜」「乃木坂で誰推しです?僕まいやんで〜〜」みたいなどうでもいいうっせぇ世間話は一切なし…ひたすら目の前のモニターに流れる天気予報を眺めるだけの時間…最高…天国か…?ここは…
そしてまたヒデじいみたいなお兄さん、ヒデ兄の手際の良いこと良いこと。もちろんカットだけなんで、マッサージやらムダ毛処理やらはないが、スピーディかつ正確。俺がしてほしい髪型の理想に限りなく近づけてくれる…おそるべきは少ない情報だけで客の真意を汲み取るその「理解力」…真のわかり哲也がここに…
いや…逆になんで俺いままで美容室に5,000円近く払ってたんだよ…差額の4,000円なんなんだよ…も、もしかして「トーク料金」ですか…?それだったらキャバクラ行きますけど…?
と、考える間もなく速攻でカットが終了した。ま、マジで10分で終わった…なんだったんだ…美容室のあのムダな一時間半は…お、俺の今ままでの髪切人生は…
鏡、サッ
「これでよろしいでしょうか?」
「は、はい…もちろん…」
胸がキュンとなる俺…
(えっ…?もう…?アタシ…もっともっとヒデ兄のこと知りたいのに…?髪切られてて逆に「こっちから話しかけたい」と思う自分がいただなんて…あの…すみません…延長…延長はあるの…?アフターは……?このあと…よかったらゴハンでも……)
と…ホスト狂いのOLみたいな顔でヒデ兄を見つめてたら、
「ハイ、じゃあ髪吸吸い取っていきますね〜〜〜〜、大きな音しますがご了承ください〜〜〜」
おもむろにバカでかいバキューム砲みたいなバカでかい掃除機取り出して俺の切った髪の毛を雑につかむヒデ兄
ギュオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッ!!!!!
俺「イデデデデデデデデ!!」
床屋「申し訳ありません〜〜すぐ終わりますので〜〜〜」
ギュオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッ!!!!!
俺「イデデデデデデデ!!引っ張ってる引っ張ってるから!!毛根が!毛根が!」
ギュオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッ!!!!!ギュイイイイイーーーーーーーーンンンン……
俺「ハァ…ハァ…えっ…えっ……?ハァ…ハァ…」
床屋「はい〜お疲れ様でした〜〜〜!クシ持って帰られます?」
いらねぇよバカ!!!は……?は!????なにこれ!???今までの丁寧さどこいったんだお前!????なに「ギュオオオオオオオオオ」って!!!????なんでそんな最後だけバーバリアンみたいに荒々しいんだよ!?????髪の毛は払えよ!!!吹けよ!!!なんだ「吸う」って!!??どういう発想!???家畜か俺!???お前これ羊の毛刈りして最後にやるやつだろ?!??は…!????
ま…まさか執事だと思ってた奴に羊扱いされるとはな…
てゆうか…俺はまだいいけど隣に座ってるジジイ大丈夫…?なんか魂ごと吸い取られたみたいに力失くした目してるんですけど…?や…やべぇ…千円カット…やべぇ…
こ…これアレですわ…差額の4,000円ドライヤー代ですわ…美容室最高…