今季放送中のアニメ『ワンダーエッグプライオリティ』、脚本があのゲロドラマ請負人こと「野島伸司」の時点でどんなに作画が美しくてもエンディングが泣けてもその道中を振り返れば死屍累々、阿鼻叫喚の屍の山が積み上がってる、ということはもはや確定案件なわけですが、本人が放送前のコメントで、
「ドラマにもコンプライアンスが侵食して、僕のような物書きは翼をもがれた感覚で、より自由度の高い場所を模索していました」
云々と語っていたことからもお察しの通り、実写の呪縛から解き放たれ完全にリミッターぶっ壊れた暴走機関車と化した野島伸司がやりたい放題やるイカレアニメでした。い、いやアニメだからってなにやってもいいということではないんですが…
1話2話の時点を一言で言うと「飲める地獄」。絶望と憎悪を煮詰めた純度100の濃縮還元のゲロ汁がバッキバキにデザインされた超絶オシャなパッケージで売られてました。このクオリティ毎週保つとかクリエイターの労働基準大丈夫か?と心配するくらいの美エグ作画に油断してると死角から首掻っ切られます。見た人殺せるアニメ。
簡単にストーリー説明すると、不登校の女子中学生・アイが真夜中に喋るカナブンの声に導かれて割ると自分の欲しいものが出てくる卵が入ったガチャを回させられて気づいたら精神世界の学校に飛んでて卵の中から同い年くらいの女子が出てきたと思ったらその女子のクラスメイトから手斧とか包丁投げつけられて殺されそうになってるから助けたら女子が感謝しながら消えるっていうアニメなんですけど……って書いててもまったく意味がわかんねぇ…風邪引いた時に見る夢かなんかかこれ?大量の薬キメながら書いてます?警察家宅捜索しろ。
伏線大好き裏切り大好きな野島伸司が1話2話くらいで物語の全容を掴ませてくれることぁないとは思ってたんですけど、全容どころかシッポすら見えてきません。そもそもシッポがねぇ。形のない化け物。
そもそも、
- アイが出会う少女達はみんなイジメやハラスメントで傷つけられその命を絶った魂らしい
- その魂を救い続けることで同じく自殺した親友・小糸の魂を救えるらしい
- 精神世界では死ぬことはないが負った傷は現実世界に持ち越されるらしい
- アイの他にも卵ガチャを回せる女子がいるらしい
「らしい」ばっかのフワッとした設定だけぶん投げられてあとは「答えはお前の中にある」みたいな話の構成なんですけど、そのセンス・オブ・ワンダー感がめちゃくちゃ怖え。
物語の視点はアイの日常(現実)、学校(記憶)、精神世界(エッグの世界)から構成されてるんですけど三者三様どれも種類の違う地獄ビュッフェをハシゴさせられてて、日常じゃ不登校でイジメられ、記憶じゃ親友自殺し、精神世界じゃ他人のトラウマと向き合わなきゃいけない、常人だったら初日で廃人化すると思うんですけどアイはそれでも普通にメシ食って笑って、もはやどっかバグってる。アイどころか他の卵女子も母親も担任も登場人物全員ネジ飛んでるんじゃねぇかっていうのだけジリジリ感じたままアニメが進むんですよ。
普通だったらこんなアニメよっぽど体調良い時にしか見れないんですけど、にも関わらず「全然サラッと見れちゃう」。この手の物語にどうしてもつきまとう悲壮感、陰鬱感が極めてうっっすい。前述したように100人に聞いたら100人が息呑む美作画とキャラクターの可愛さ、出てくる敵のコミカルさ、OPEDのノスタルジーポップさによって地獄が地獄として認識できなくなってくる。純度100のゲロ汁をポカリみたいにゴクゴク摂取できちゃう。多分これが野島伸司の言う「アニメだからこその妙」で、ドラマだったら直視すると目溶けてくるような内容でも違和感なく脳に入ってくる。
だからこそ、この「気軽に摂取できるトランス感」がめちゃくちゃ気持ち良くて怖え。たぶんこれ回重ねるたびにどんどん脳が麻痺してきて野島伸司作品特有の「どんなに途中経過が地獄でも最後まで我慢して見た人間にしか味わえない天国絶頂感」を味わえるころには見てるこっちの精神が崩壊してんじゃねぇかってビクビクしてます。
『ワンダーエッグ・プライオリティ』、後世まで語り継がれる神アニメになるか末代まで呪う糞アニメになるかのどっちかだと思うんですが、どうなろうが「まぁこれが野島伸司だから…」で納得できそうなのマジでズルいなと思いました。もしクソアニメになりそうだったら武田鉄矢トラックに突っ込ませたらいい。