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ミクスチャーブログ

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「サブカル」って結局どこまでがサブカルなんだよ

映画『花束みたいな恋をした』のネタバレするんですけど、これ劇中にとんでもない量の実在する音楽やら漫画やら小説やらの固有名詞がバンバン出てきて思い出と共感性羞恥に惨殺されるメンタルスプラッター映画なんですね。

だから感想とか評価漁ってもいわゆる「サブカル系御用達」的な語られ方してるのがほとんどで俺もそう思ってたんですが、ふと「サブカルって結局どこまでがサブカルなんだ」って考えたらわからなすぎて脳溶けました。

 

そもそも「サブカル」の意味調べても

サブカルチャー。社会の正統的、伝統的な文化に対し、その社会に属するある特定の集団だけがもつ独特の文化。大衆文化・若者文化など。下位文化。サブカル。→カウンターカルチャー

サブカルチャーのかんたんな意味 Weblio辞書

 

は…?全然わからん…なんて…?か、カウ…?

 

一方、「メインカルチャー」

サブカルチャーと対比して用いられる語で、ある社会で支配的な文化のことである。文学、美術、演劇、音楽などの事であり、20世紀になって大衆文化が発達し、次第に映画、テレビ番組、ポピュラー音楽、ビデオゲームなども学問や論評の対象となり、メインカルチャーと認識されている。

メインカルチャー - メインカルチャーの概要 - Weblio辞書

 

えっーーと……もうだいじょうぶです…

どっから下位(サブ)でどっから上位(メイン)なんだよ。売れてるか売れてないかってこと?なにを基準に?誰が決めてんの?支配的文化ってなに?

例えば『花束みたいな恋をした』で同じ文脈で語られるカルチャーが、

 

天竺鼠、今村夏子、押井守、きのこ帝国、羊文学、ゴールデンカムイ、宝石の国、穂村弘、長嶋有、A子さんの恋人、いしいしんじ、タムくん、長谷川白紙、cero、舞城王太郎、フレンズ、Awesome city club、ナンバーガール、崎山蒼志、菊地成孔の粋な夜電波、ストレンジャーシングス、ゼルダの伝説、SMAP…他

 

なんですが…これ全部「サブカル」ってことでいいですか?さ、サブカル…?ゼルダが…?SMAPが…?頭おかしくなりそうだよ。サブとは…?

 

たしかに、天竺鼠とかきのこ帝国とかゴールデンカムイとか観測範囲でも「知る人ぞ知る」的に評価されがちなメンツだし、粋な夜電波聴いてる奴がメインとは誰も言わないと思いますけど、M-1準決勝常連芸人とかMVが何百万再生もされてるバンドとか1500万冊売れてる漫画が「サブ」?数字だけでいえばゴリゴリのメインでは?勝手にサブ呼ばわりして殺されません?三河屋?

そのくせ『魔女の宅急便(実写)』『ショーシャンクの空に』を見る陽キャを見下したり、セカオワが流れるカラオケで肩身狭そうにしたり、「(ワンオク)聴けます」発言とか「メインに迎合しない俺ら」を際立たせるためのメインカルチャーの表現として選ばれたチョイスがあんまりピンとこないんですよ。セカオワとかむしろサブカルの権化だと思ってたわ。パンプキン城みたいな家住んでるし。

 

だったらサブとかメインとか関係なく、単に「カルチャー映画」って呼べばいいだけじゃねぇかとも思ったんですけど、主人公の2人ってたぶん他人から「サブカル系」って言われることは嫌うくせに「人と違う趣味を持つ自分」「サブでいること」にめちゃくちゃプライド持っててそれを人より詳しいことでマウント取りたがる超めんどくさい奴らなんですよ。自己紹介で「好きな言葉はバールのようなもの」(菅田の大好きな『水曜日のダウンタウン』の説)とかわかる人間にだけわかる「かまし」するような奴なんですよ。だから紛れもなくこれ「サブカル映画」です。俺かよ。やっぱり俺は菅田将暉だったのか…?

「大勢が知らないこと」がサブカルマウントの指標になるんだったら、MV再生数4ケタのバンドとかワンステージ500円の地下ライブ出てる芸人を愛してやまない奴らこそサブカル系でそれ以外は確実にメインじゃないですか。にもかかわらず絶妙に「SNSに感想あげたら反応もらえそうな普通に人気ある」コンテンツを出してくるあたり完全に俺でした。

 

だからこそ、どっからサブでどっからメインなのかハッキリさせたいんですよ。将暉(俺)のためにも架純のためにも。ONE PIECEはメイン?ハイキューは?チェンソーは?鬼滅は?呪術はサブ?ミスチルはメイン?髭男は?King Gnuは?米津玄師は?星野源はサブ?

日本一売れてる漫画雑誌に載っててもオリコン1位獲っててもサブ?

例えばお笑いだと、シソンヌとかチョコプラ好きっていうと10年前までは「マイナー芸人の名前出すサブカル野郎」認定されてたイメージなんですけど、いまこの2組っていまテレビ出まくってる超メイン側だし、「シソンヌ好き」「チョコプラ好き」って言ったらむしろサブカル系からニワカ扱いされかねないじゃないですか。

じゃあいつからメインになったのか、キングオブコント決勝出たときなのか、有吉の壁に出始めたころなのか、その線引きがいつまでも曖昧だから同じ「カルチャー」のなかでも、ONE PIECE好きはバカにされがちで呪術廻戦チェンソーマンに最初から目つけてた奴は偉い、みたいなのが起きると思うんですよ。

 

他の漫画で言えば、寿林檎先生の『贖罪の阻害』とか田部好美先生の『ちなつはいつもこまりがお』、アニメだと『彼女がドアを開けたら俺が立っていたんだが』とか『ヒップロケット!』を今さらサブカルとして語るとめっちゃ叩かれるじゃないですか。

バンドなら『ビーフストロガノ’S』とか『平成ケトル』、シンガーソングライターだったら『下村群青』もサブカルかって言うと知名度や実力的には絶対に違いますよね。

言いたいのは「大衆に知られてる作品」=「メインカルチャー」ってひと括りにするのは極めて危険な行為だし、反対に「サブカルチャー」と呼ばれる作品を果たしていつまで「サブ」と呼ぶのかっていうのはものすごく重要だってことなんですよ。

言葉の意味や定義をしっかり決めることでそれがエンタメ全体の発展にも繋がってきますし、カウンターカルチャーとしてのサブカルチャー、ハイカルチャーとしてのメインカルチャーっていう画一的な思考からの脱却を図れるんじゃないでしょうか。

 

 

…まぁ『ちなつはいつもこまりがお』って漫画も『彼女がドアを開けたら俺が立っていたんだが』ってアニメも『ビーフストロガノ’S』なんてバンドもいないんですが…

存在しないカルチャーこそ「真」のサブカル

 

『花束みたいな恋をした』オフィシャルフォトブック