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「田舎地獄あるある」心中ラブコメ漫画『少年のアビス』

以前、「高校の同級生の結婚式行ったらほぼ全員肉体関係持っててヤバ」ってブログ書いたんですけど、田舎に住んでると

「高校で好きになったあの子は小学校の先輩の元々カノで中学校の後輩の元カノでクラスメイトの現セフレでした」

みたいなこと普通に日常茶飯事ですし、ファミレスとか行くと100パー誰かしら知り合いと出くわして最悪ですし、友達と喧嘩して絶交してんのにその親同士が仲良くて縁切れてないから正月に両家族で集まって同じテーブルで雑煮食うことになって拷問ですし、就職先は「親がやってるボロボロの印刷会社」か「嫌いな友達の親がやってる電器屋」か「嫌いな先輩がいる中古車屋」か「ジジイババアしか来ない役所or信用金庫」か「漁師」か「鳶」しかなくて修羅ですし、ウワサ話は5Gより光速です。

そんな「田舎地獄あるある」をこれでもかと詰め込んで濃縮して生搾りして極上のフィクションに昇華してる漫画があります。

少年のアビス 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

何もない町、変わるはずもない日々の中で、高校生の黒瀬令児は、“ただ”生きていた。家族、将来の夢、幼馴染。そのどれもが彼をこの町に縛り付けている。このまま“ただ”生きていく、そう思っていた。彼女に出会うまでは――。 生きることに希望はあるのか。この先に光はあるのか。“今”を映し出すワールドエンド・ボーイミーツガール、開幕――!!

[第1話] 少年のアビス - 峰浪りょう | となりのヤングジャンプ

 

オッス!オレ!黒瀬令児!17才!

ばあちゃんの介護に疲れ切った母さんと引きこもりで夜中暴れまくる兄ちゃんと暮らすちょっと不幸な男子高校生!

「人生つまんねー…」

そう思ってたオレの前に突然現れたのは…あこがれの超人気アイドル・青江ナギ!?

戸惑うオレ…そんな俺にナギは衝撃の言葉を投げかける…!?

 

「私たちも今から心中しようか…」

 

え!?なぜか彼女と一緒に心中することに!?オレいったい、どーなっちゃうのー!?

 

ドタバタムズキュンラブストーリー!?『少年のアビス』!!

 

主演!山崎賢人!本田翼!監督!福田雄一!来春実写化決定〜!!

 

…みたいな「ちょっと重めのちょいエロラブコメ」くらいのテンションで読み進めてたんですけど真逆も真逆でした。

心中するつもりが一発ヤッちゃってそのアイドルには旦那はいてそいつが幼なじみの女の好きな小説家でその小説家と母親もヤッててその母親は幼なじみの男と不倫してるし担任とも勢いでヤッたけどド級のメンヘラで…

…という、次から次にノンストップで絶望が押し寄せる絶対に福田雄一では実写化できないタイプの地獄ディズニーランドでした。

序盤の時点で「不倫」「寝取られ」のダブルパンチで頭おかしくなりそうだったんですけど、なんかもう最近は「主人公は一体誰と死ぬのか」みたいなガチの心中サバイバルバトルになっててもう目も当てられません。ギャグでもなんでもなく出てくる登場人物全員「令児くんと死ぬのは私(俺)だ」とか言い出してる。

しかも、そのメンバーが

  • 死にたがり女アイドル
  • 束縛毒母親
  • メンヘラストーカー女担任
  • 幼なじみ自虐女
  • 幼なじみBLヤンキー男

と年齢性別関係なし、マジでロクなのいねぇリアル「イカれたメンバーを紹介するぜ!」。全員「令児くんだ〜いすき♡」以外考えられないサイコ。

束縛毒母親は令児に対して「あなたの好きなことしなさい」と口では言っててもその実、優しい令児が家族を見捨てて逃げるなんてできないことを誰よりも知ってる甘辛毒親だし、ストーカー女担任は金と身体で令児を縛りつけて自分の「理想のかわいそうな子」押し付け出してるし、幼なじみ自虐女は肝心な時にウジウジウジウジ面倒くせえし、幼なじみBLヤンキーは過去に令児を助けたことをいつまでも免罪符にして令児を縛り続ける厄介ツンデレだし、ラブコメとか書いてますが地獄すぎて笑うしかないという意味のラブコメ。どのルートを選んでも「最悪」しか待ってない闇のゲームが開幕してました。

しかも、この漫画が俺にとって一番怖いのが、田舎においてこの話って全然「ある話」ってことで、言ったら「町の住人全員顔見知り」っていう蜘蛛の巣みたいなコミュニティに属してると、自分を置き去りにして他人が変わっていくことの嫉妬とか恐怖っていうのは多かれ少なかれ必ずあって「変化」を絶対に許さない人間も大勢いるんですよ。

だからどっかで頭のネジ外れてないと田舎って暮らしていけないんですけど、令児が家族や友達のこと気にして田舎から抜け出せないのは当然だし、幼なじみのヤンキーが令児を絶対に町から逃げさせたくないって気持ちも理解できるんですよ。

『少年のアビス』はそこのディテールの細かさがハンパなくて、建物なんもなくて空めっちゃ広いのに終始感じる閉塞感だとか、登場人物が全員共通して「田舎」というものを「地獄」と捉えてるからこそ感じるある種の「諦めの空気」そういうのがストーリーだけじゃなく「絵」で伝わってくる。

そんな中、突然現れた「青江ナギ」っていう異物に心も身体もほだされたら、そりゃ当然狭い世界しか見てこなかった令児の世界はブッ壊れるに決まってる。その「なにも知らなかったガキがエロとラブとデスを知ってからの変化のリアリティ」が鬼のように丁寧で読めば読むほど「現実」と「ファンタジー」が波みたいに交互に押し寄せてきてゲロ吐きますし致死量まで言葉のナイフ刺さります。とにかく「田舎」に対して違和感がある人間にこそ読んでほしい漫画でした。

 

…と書き終えた矢先、地元に住み続けてる高校の同級生とのLINEで「なんかオススメの漫画ない?」と聞かれたので、この漫画のリンク送ったら、

 

「読んだけど全然ピンと来なかったわー」

 

え…?マジで言ってる…?お前らモデルにした漫画なんだが…?

 

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