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ミクスチャーブログ

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「名探偵コナン推理ガチ勢」だった僕を変えた灰原哀

小学生の時『名探偵コナン』の「推理ガチ勢」だった。

 

被害者の死因、死亡推定時刻、現場の状況、容疑者の名前と職業、被害者との関係性をすべて把握し、犯人が誰かコナンの目線に立って全力で推理した。おかげでコナンが小五郎を眠らせる前にはだいたい犯人がわかってた。コナンよりも早くドヤ顔をすることが生きがいだった。俺にはネクストコナンズヒントなんて必要なかった。とにかく名探偵コナンという作品の「事件」「推理」の部分にだけのめり込んでいった。

 

そういうマジの「ミステリーもの」として名探偵コナンを楽しんでいた俺に、突然吹いた風。それが「灰原哀」だった。

あれは忘れもしない1999年、小学4年だった。第129話『黒の組織から来た女 大学教授殺人事件』。あの衝撃は今でも忘れられない。

あの頃の俺は完全に「江戸川コナンそのもの」だったので、小学校が退屈でしょうがなかった。突然、転校生として現れた彼女は「チッ、ま〜たガキどもとくだらねぇ授業受けなきゃいけねぇのかよバーロ…」とため息をついてた俺(コナン)の席の隣になにも言わず座り一言、

 

「よろしく…」

 

一撃で心臓を撃ち抜かれた。それは灰色の弾丸。彼女の氷のように冷たい目と、その奥に隠れた悲しみ。「守りたい」そう思った。

…それからというもの、完全に俺は「江戸川コナン」ではなくなっていた。いや「最初から江戸川コナンではなかったことにようやく気づいた」と言うべきか。そう、俺は江戸川コナンなどではなかった。ではいったい誰なのか。

 

僕は「光彦」という一人の恋する男だったのだ。

 

灰原哀に出会い、自分が光彦だということに気がついてからは満開の桜のような日々だった。彼女の心の氷が回を追うごとに少しずつ溶けていくたび、とても嬉しい気持ちになった。「事件」?「推理」?そんなものはどこか遠くに消え去っていた。彼女以外、誰がどうなろうがどうでもよかった。灰原さんが活躍する回は神回、それ以外は僕にとってはクソ回だった。

だが、改めて光彦になって光彦の視点で『名探偵コナン』という作品に触れ「灰原哀」という一人の女性を見つめると、頭がおかしくなるほどに痛感してしまう。

 

「灰原さんには僕じゃない」

 

灰原さんがあの日僕たちの前に現れてから今にいたるまで、一貫して灰原さんはコナンくんしか見ていない。いや、正しくはコナンくんだけを「対等に見ている」。僕や元太くん 、歩美ちゃんを見る目線は、友達や恋人というよりもむしろ「母親」の目線に近い。僕は灰原さんを守りたいのに灰原さんに守られている現状が悔しくて仕方なかった。

「大丈夫…?」

と微笑む彼女の優しさに触れるたび、泣きたくなる。

しかし、コナンくんだけは違う。灰原さんがコナンくんを見る目は僕たちに向けられているものとは明らかに別物だった。時には、一緒に事件を解決する「相棒」のような眼差しで、またある時は苦楽を共にする「夫婦」のような眼差しで灰原さんはコナンくんを見つめている。

灰原さんとコナンくんは時々、僕たちを置きざりにして二人だけの世界に入ることがある。僕には想像もつかないが、二人の間には僕たちの知らない大きな「秘密」があり、僕たちでは太刀打ちできないほどの強い「信頼」があるのだろう。それが悔しくて仕方ない。

 

でも、僕は知っている。灰原さんが僕のことをなんとも思っていないと同じで、コナンくんもまた、灰原さんのことをなんとも思ってないということを。灰原さんの中にコナンくんしかいないように、コナンくんの中には「毛利蘭」しかいない。

そして、そのことを誰よりもわかっているのが灰原さん自身だということも、僕は知っている。そう、灰原さんはコナンくんを見ていたんじゃない。コナンくんに自分を見てほしかったんだ、と。

 

だからこそ、コナンくんが灰原さんに対して思わせぶりな態度を取ることが、最初は本当に許せなかった。あのムダにデカいメガネを叩き割って蝶ネクタイで首を締めてやろうかと何度思ったかわからない。なにが「あれれ〜」だよ、僕たちの前では威張り散らしてるくせに大人の前でだけ子供ぶりやがって。なにが「ごらんのスポンサーのていきょうで!おおくりします!」だよ。ふざけるのもいい加減にしろ。

 

…しかし、数々の事件を一緒に解決していくにつれ、彼の正義感はまぎれもなく「本物」なんだということに気がついた。それだけは認めざるを得なかった。灰原さんが彼に惹かれる理由がわかる気がした。彼には未来を変える力があった。でも僕は…

 

コナンくんはいつもなにかにつけて、こう言う。

 

「真実はいつもひとつ」

 

僕にとっての…真実…?

 

灰原哀という「難事件」を解決するネクスト光彦ズヒントはまだわからない。愛を伝える勇気もない。曖昧にはぐらかすだけのdays、泳ぐeyes、そんな自分が本当にふがいない倉木麻衣