サブスクで解禁された藤井風の洋楽カバーアルバム『HELP EVER HURT COVER』を改めて聴いて絶望してる。
もう凄すぎて逆に腹が立ってきた。俺はいったいなにを聴いてる…?洋楽?いや…違う…これは…「風楽」
藤井風だけが奏で歌うことのできる藤井風の音楽、略して「風楽」、知ってる曲だろうが知らない曲だろうが、英語だろうが日本語だろうが、歌詞がわかろうがわからなかろうが、そんなもん関係ねえ。藤井風フィルターを通すことで一瞬で藤井風の色になり、リスナーの語彙力が消失し「やば…」としか言えなくなる。藤井風は全ての曲に容赦なく才能という絵具を塗りたくる。
にもかかわらず、このカバーアルバムを聴くと半強制的に「原曲も聴きたくなってくる」。どんなに崩しても忠実に再現しても奥底には原曲への鬼のリスペクトがある。だからこそ原曲の理解を深め、藤井風がどういう色を加えたのか知りたくなってくる。知識欲がビンビンに刺激される。そうすることで原曲とカバーの破壊力が何倍にも膨れ上がる。もう一度言います…なにこれ?なんだこのジャケ写?23にしてすでに「偉人」の顔してるじゃねぇかよ。
1.カーペンターズ『Close To You』
藤井風「Why…」
2秒で天に召される。身体が透けてくる。天空から羽の生えた藤井風が迎えに来る。「君の歌声を聴いてると…なんだか…とても眠いんだ……」フランダースの風の前では俺はただのネロになる。
あまりにも心地良すぎて2曲目に進めねぇ。この一曲だけでもう何時間もループしてるんですが、これはアルバムとしてこれは正解なのか俺にはもうよくわからない。
2.エド・シーラン『Shape Of You』
ようやく2曲目に進めたと思ったら寝起きでジェットコースター乗せられた。
音の暴力。誰がピアノ弾き語りでエド・シーランカバーする?エグすぎてギャップで胃酸逆流して逆流性食道炎になった。藤井風の才能に俺の身体がついていけてません。
3.オージェイズ『Back Stabbers』
ゴリゴリの黒人ナンバーも藤井風の前では藤井風の音楽でしかない。日本人が無理して英語歌ってる感が1ミリもない。違和感がなさすぎて逆に違和感がヤバい。え?てゆうか発音がナチュラルの極みすぎてもはや英語聴いてるって感じすらしない。これは英語ではありません「風語」
4.バート・バカラック『Alfie』
これが初聴だったんだが、さっきも言ったように知ってる曲だろうが知らない曲だろうがそんなことは藤井風の前にはなんの関係もねえ。母体から聴いてたかのように耳に馴染む。全ての苦しみから解放される。この曲を聴いた今日が僕の誕生日だった。
5.アリアナ・グランデ『Be Alright』
「エイッ…エイッ…」「オォゥ…オォゥ…」「アィッ…アァッ…」藤井風のフェイクで死人が出る。犯罪の色気。一刻も早く藤井風法を成立させて何らかの取締を強化させろ。藤井風に狂わされた生きる屍が街にあふれる。
6.マイケル・ジャクソン『Beat It』
再び来る「誰がピアノ弾き語りでカバーすんねん」曲。藤井風はたぶん人間のなかで一番破裂音「パ行」の発音が上手え。世界パピプペポ選手権優勝だろ。
日本人で真正面からマイケル・ジャクソンカバーしてマトモに成立するの久保田利伸か三浦大知か藤井風くらいしかいないんじゃないでしょうか。誰か今すぐ藤井風を世界遺産に申請してください。
7.サンタ・エスメラルダ『Don’t Let Me Be Misunderstood』
ボロボロのスナックでベロベロに酔っ払ったオッサンがカラオケでよく歌ってる曲第5位、尾藤イサオ『悲しき願い』の原曲。それが藤井風にかかればワイン1杯1万の超高級バーのBGMになる。
8.フランキー・ヴァリ『My Eyes Adored You』
なんかよくわかんねーけど藤井風のこと「父ちゃん…」って呼びたくなった。なんだこの安心感。お祭りのあとの帰り道に疲れて寝ちゃっておんぶされてる感覚。藤井風8歳も年下だが。
9.テイラー・スウィフト『Shake It Off』
原曲どこいった?
真っピンクの口紅塗ったイケイケ金髪女と顔面入れ墨のムッキムキ大男がノリノリで腰振りながらディスコで踊り狂うダンスナンバーが汚い心をすべて浄化する聖歌に。
10.エイミー・ワインハウス『Stronger Than Me』
もはや藤井風とピアノのツインボーカル。風の声がピアノを引き立て、ピアノの声が風を引き立てる完璧なニコイチ。いや…むしろ藤井風とピアノは「同一人物」だと言ってもいい。賭ケグルイの実写化じゃなくて藤井風主演『弾キグルイ』作って実写化してほしい。藤井風の実写化とは?
11.フランク・シナトラ『Time After Time』
聴くプラズマクラスターか…?スピーカーからめちゃくちゃイオン出てるんだが?この曲が鳴ってる半径10メートルたぶん空気綺麗になってる。シャープは藤井風モデルの空気清浄機を早く開発して80万とかで販売したほうがいい。
このアルバムが生まれた瞬間、この世の大衆音楽は邦楽、洋楽、そして風楽の3つに分けられた。オリコンランキングの集計分けたほうがいい。