つねづね「サビ前の無音と結婚したい」と公言している身からすれば、SixTONES『わたし』はどう考えても「俺のために作った?」としか思えない。
今年の「サビ前の無音オブ・ザ・イヤー」は、Creepy Nuts『パッと散って灰に』がブッチギリの1位だと確信してたんですがSixTONESからここまで最高の無音が爆誕するとは思わなかった。マジで結婚しよう…
そもそもSixTONESはジャニーズの中でも「王道を崩した王道」、あえて「誰もが通る道」に行かず、信じられない方向にグニャグニャ曲がる魔球的な曲を量産しているイメージがあったんですが、ここに来てド真ん中剛速球ストレートラブバラードを出してくるのは一周回ってただの「罪」。確実にギャップで死人が出る。
その中で、満を持してブチ込まれる無音。「夢にまで見た無音」とはまさにこのこと。Cメロ言って一回Bメロ戻って大サビ「来る来る…来る来ッッ…キッツ……」と、ほしい場所にほしいタイミングで無音が来る快感を味わっていただきたい。
松村北斗、髙地優吾「その意味はァ…その価値はァ…答えようのない問いだけどン…」
京本大我、森本慎太郎「それなのにィなぜェ…?それなのにィイイなぜェエエエ……?」
京本大我「何かを見つけたような気持ちでェエいるゥウウウウウゥゥ!!!!」
ジェシー「分かってはいるよォ……きっと素敵なことだとォ……」
松村北斗「それでもわたしがァ…追いつかなァア
ファッ……
アアいィィィイイイイイ………」
……
田中樹「あり得なァアアア〜いィイッッ………!」
ドゥンッッ……!!!!!
全員「ところまでぇエエエエエエエエ!!!!!」
「超ロング無音」からの「ギターのドゥン音」の即死コンボ。本当にありがとうございました。
そもそも「男の歌う一人称『私』の曲」、音楽的にあまりにも強い。一人称「僕」の曲とは違い、その多くは女性の気持ちを歌った曲が多く、全く異なる「他人」を歌っているからこそ「僕曲」よりも表現力と理解力が試される。
一歩間違えば「なにも知らないくせに分かったようなこと歌うなボケカスコラァ」となってしまうある意味「諸刃の剣」曲なんですが、完璧にハマった時にはこの星もろとも昇天するほどの爆発力がある。
中でも特に、ジャニーズの歌う「私曲(わたしきょく)」は
KinKi Kids『愛のかたまり』、山下智久『抱いてセニョリータ』、二宮和也『虹』、Sexy Zone『桃色の絶対領域』
など、数こそ少ないがどれも窒息するほどの破壊力を誇ってウィルのだ。この世のどの職業よりも目の前のファンを魅了するために存在するアイドルが、ある意味で「自分ではない」曲の主人公を憑依させながら歌う。その瞬間、性別を超えた「人間」としてのとんでもねぇ色気が放出され、聴いた人間は否応なしに色気スプラッシュマウンテンに登頂。「私曲」の前では誰もが登山家なのだ。は?
それを踏まえた上で、この『わたし』は超シンプルなタイトル、しかし俺から言わせてもらうと、これ以上勝負に出た曲はないと思いました。いま書いたとおり「この曲を歌わなければならない」=「これまでリリースしたどの曲よりもボーカルとして技量が問われてしまう」ということで、吐息すら聴こえてきそうなシンプルなアレンジ、すなわち良くも悪くも他のバラード曲と差別化を図れるのは「声」だけ。
そのプレッシャーを想像するだけで、俺は胃に穴開きそうになるんですが、SixTONESはマジでやってくれた。それぞれの声の一番「良い部分」を抽出して鼓膜にブチ込んでくる。とりあえず作詞作曲と歌割り決めた全員に死ぬほど高い酒おごりたい。
メンバーそれぞれが自分の中にいる石美を表現していてどこ切り取っても旨味しかないSixTONESローストビーフ。もはやこれはSixTONESであってSixTONESではない、全員で恋に狂わされる一人の女性「石美(ストみ)」
特に「松村北斗」に関してはバチェラー・ジャパンを恋愛大喜利バラエティとして見てるような人間がなぜこんなにも恋心を切なく歌うことができるのか…俺は松村北斗が怖くて仕方ありません。早く次のバチェラーになって、さんざん参加者振り回して狂わせて最後の一人選ぶ時に目の前でバラ食って番組メチャクチャにしてほしい。