『KICK BACK』のカップリング『恥ずかしくってしょうがねえ』をおまえはもう聴いたか…
この2曲を一枚のシングルにねじ込んだ米津玄師、本当に恐怖でしかない。毎回新曲聴くたびに怖がってるような気がしますが、恐怖と米津は俺にとってもはやイコール。『KICK BACK』の後に『恥ずかしくってしょうがねえ』を聴いて「本当にすいませんでした…」と音の前で土下座した。とりあえず『ペトリコール』『amen』『ララバイさよなら』『でしょましょ』『クランベリーとパンケーキ』を愛してる私は情緒が終了しました。
KICK BACKが「足し算の米津」「動の米津」なら『恥ずかしくってしょうがねえ』は「引き算の米津」「静の米津」。カツカレーにラーメンとハンバーグと大トロと餃子をぶち込んで豚キムチと明太子とイクラをぶっかけたこの世の全部乗せ丼が『KICK BACK』ならば、『恥ずかしくってしょうがねえ』はシンプル「土鍋で炊いた米」
派手さこそ無いが気が狂うほど美味い。米津以外の要素を極限まで抑え込むことで、一音一音に「米津玄師」が凝縮されて米津だけを感じることができる。今まで米津がリリースしたどの曲よりも近くに米津がいた。アンダーグラウンドの匂いが充満したオルタナティブな米津が…
『KICK BACK』が「乱暴で馬鹿で下品だけど憎めないヤンキー」なら『恥ずかしくってしょうがねえ』は「普段おとなしいけど実はキレたら一番ヤバかった奴」の典型。絶対「いやぁ…そんなことするような子には見えなかったんですけどねぇ…」って近所のおばさんにインタビューで言われる。
どこを聴いてもフックしかない、ネットでバズる要素を片っ端から詰め込んで絶対にヒットさせる確信だけを持って作られたような『KICK BACK』と、刺さる人間だけを確実に刺しに行くこの曲との対比が本当に怖い。
「恥ずかしくてしょうがねエ゛……」
いくらなんでも、ガラガラが過ぎる。この「エ゛……」の圧倒的な色気と殺気に殺られろ。俺の耳元で米津が囁く米津玄師のASMR。
「恥ずかしくてしょうがねエ゛……」
ブゥェーーーーーン…ベェエェェーーーーーーーン…
というなんらかの音で圧倒的不穏さを演出して、
「サングリアワイン…」
キィーーーン!ピィーン!
サビで音がいきなり上がってポップになるんですが、アレンジの高低差によって耳がグチャグチャになります。鉄琴の音で「あれ…?怒ってるかと思ったけど気のせい……?」と油断させておいてラストで、
「もっかいちゃんと話そうぜェ…」
ブゥィィイィィィ……ヴヴヴヴヴエェェ………
鬼のブチギレ。
「不穏→安心→不穏」のションベン漏らす恐怖の構成力。このアレンジの高低差、完全に躁鬱。ピュアとシリアスのわんこそば。気持ち良いと気持ち悪いの反復横跳び。
サングリアワイン 口に合わねえな 無謬の民による宴 帰らせてくんねえか
サングリアワイン 誰もがユダなら もっかいちゃんと話そうぜ
もう俺には「今すぐお前の家行くから全員アカウント消してスマホ破壊して布団の中でガタガタ震えとけ」と言われてるようにしか聴こえません。
どういう真意で作られたのかは知りませんが、この曲がSNSのダルさ、ひいては「KICK BACKのMVをイジってあらゆるものに米津玄師が轢かれるめちゃくちゃスベってる動画へのアンサー」だと思うと俺はもう一生安眠できる気しない。インターネット、あまり米津玄師を舐めるな…
アァァァ…ァァアアアァァアァァァ………!!
血が流ァ……れてェェェ…!ゆゥゥゥクゥゥ……
誰のものかァ……わからァッ…!ぬまァァまァ………
ンヌァ………
ここッッ!!!この「ンヌァ………」にすべてが詰まってる。もう曲名「ンヌァ………」でいい。