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スピッツ『美しい鰭』があまりにも「灰原哀」で泣いた僕は光彦

「相手はイルカ…そう…海の人気者…暗く冷たい海の底から逃げて来た意地の悪いサメなんかじゃとても歯が立たないでしょうね…」

これは『名探偵コナン』単行本31巻、アニメ第246話~247話に収録されている『網にかかった謎』で灰原哀さんが言った言葉だ。

「イルカ」というのは、工藤新一の彼女・毛利蘭さんのことを指している。彼女はいつも自分のことを卑下し、キラキラと輝いている毛利蘭さんを羨んでいた。

犯罪組織に加担し、いくつもの命を関節的に奪ってきた彼女にとって、何も汚れた部分がなく、ただまっすぐに工藤新一を想い続ける毛利蘭さんがイルカに見えていたのだろう。

そして自分は他人を傷つけてしまう「サメ」だと、そう言っていたのだ。「僕」はそんな彼女の哀しみに気づくこともなく、アホみたいな顔をして遠くから彼女をただ見つめていた…

 

どうも、光彦です。

 

スピッツの新曲であり、映画『名探偵コナン 黒鉄の魚影』の主題歌『美しい鰭』が本当に素晴らしくて泣いてしまった。まだ映画は公開前で、この曲がストーリーにどこまでリンクしているかは分からないが、確信した。これは「灰原哀」の曲だと。

イントロのドラムから『チェリー』(シェリー)を彷彿とさせる明るさの中に切なさを含んだメロディ…様々な感情を内包した歌声…じんわりと抜けない杭のように心に刺さっていく歌詞…この曲で奏でられる一音一音が、紡がれる一言一言が、その何もかもが僕の知っている灰原さんだった…

 

波音で消されちゃった

はっきりと聞かせろって

わざとらしい海原

灰原さんはいつも自分の気持ちを隠していた。彼女は大事なことをいつもはぐらかす。本心をひた隠して、僕たちのことを「子供ね」とからかう。僕は本当にそれが悔しかった。でも、そんな彼女に対して僕は何も言うことができなかった。なぜなら僕は灰原さんのことをなにも知らないのだから。

彼女に「はっきりと聞かせろ」と声をかけてあげられるのは僕じゃない…「彼」だった…

 

あの日のことは忘れないよ

しずくの小惑星の真ん中で

「あの日」がいったいどの日を指すのか、僕には分からない。彼女は僕たちには決して涙は見せない。灰原さんの本当の涙は「彼」しか知らない。

でも僕も忘れない。あの日、背中に感じた温もりを。

 

流れるまんま 流されたら

抗おうか 美しい鰭で

壊れる夜もあったけれど

自分でいられるように

僕には灰原さんが抱えている哀しみの全てを知ることはできない。

しかし、自分のことをサメだと思っていた彼女が、僕たちといる時間を通して少しでも自分を「美しい」と思える瞬間ができたのだと思うと、胸が張り裂けそうになる。

 

秘密守ってくれてありがとうね

もう遠慮せんで放っても大丈夫

灰原さんと「彼」はいつも「秘密」を共有してきた。それは僕たちには想像もできないほどの大きなものなのだろう。そしてそれが灰原さんの唯一の心の拠り所だったのかもしれない。でも、灰原さんは変わった。「彼」に頼らずとも自分の鰭で泳げるようになったのだ。そんな彼女のために、僕にはなにができるだろうか。

 

流れるまんま 流されたら

出し抜こうか 美しい鰭で

離される時も見失わず 君を想えるように

灰原さんのモデルは、コナン・ドイルの小説シャーロック・ホームズシリーズに登場する「アイリーン・アドラー」だということが青山剛昌先生のインタビューで明らかになった。そして、アイリーンは「ホームズを唯一出し抜いた女性」として知られている。そのことを知らなければ「出し抜こうか」という一文は絶対に出てこない。まさか草野マサムネは「彼」なのか…?

「彼」はときどき僕らを無視して一人で突っ走ることがある。特に映画での「彼」は「推理」をするためなら自分の危険などいっさい顧みず、凶悪犯にも立ち向かっていく。

そんな「彼」を決して見失うことなく、つねに支えているのはまぎれもなく灰原さんだった。灰原さんは誰よりも「彼」を理解していた。

 

強がるポーズは そういつまでも

続けられない わかってるけれど

優しくなった世界をまだ 描いていきたいから

こんなにも「今の灰原哀」を表現した一文があるだろうか…

僕は灰原さんの氷のような心が、少しずつ溶けていくのをずっと近くで見てきた。出会った頃に比べるとずいぶん笑う回数も増えたし、時にはイタズラっ子のような顔をすることだってある。

灰原さんにとっての「優しくなった世界」の片隅にでも「僕」という存在がいるのなら本当に嬉しい…

 

僕はずっと「灰原さんには僕じゃない」と思っていた。「彼」、いや、江戸川コナンに対して嫉妬のような感情を抱いていた…

思わせぶりな態度で灰原さんを惑わすだけ惑わしてなんの責任を取ろうとしないコナンくんに腹が立ち、なにもかも組織にバラしてやろうかと思ったことすらある。僕はジンさんとつながっているんだ。

 

でもそれは愚かな行為だと気づいた。コナンくんはもう関係ない。立場?秘密?どうでもいい。大切なのは「僕」がどう思っているかだ。『美しい鰭』を聴いてそのことに気がついた…

「大切なのはその知識を誰に聞いたかじゃなく、どこでそれを活用するか…今のあなたは私にとって最高のレスキュー隊員よ!」

いつか灰原さんが僕に言ってくれたこの言葉…僕は君にとっての永久レスキュー隊員になりたいんだ…

灰原さん…最後に僕から君にヒントを出したいと思う。この難事件を解決するための「ラスト光彦ズヒント」を…

 

ラスト光彦ズヒント…

 

愛してる

美しい鰭

美しい鰭

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