一回目の俺「さ、米津玄師の新曲聴くかぁ〜!CMで聴いた感じだと『LADY』の流れを汲むような、多幸感あふれる幸せハッピーソングだったんだよなぁ〜!ぶっちゃけ米津の曲は暗〜〜〜い曲のほうが好きだけど、まぁ、たまにはこういう曲もいいよな!」
米津「ゴゴゴゴゴガッァ……ダァーーーーーン…ヌラヌラヌラヌラ…」
俺「えっ」
米津「毎日ィ毎日ィ毎日ィ毎日ィ…僕は僕なりに頑張ってきたのに…毎日ィ毎日ィ毎日ィ毎日ィ…何一つもォ…!変わらないものをォ…!まだァ……
愛せるだろうかァ………???」
俺「…いや、暗ッッッッッ!!!!!!!えっ!?暗ッ!?!?お、俺がCMで聴いてたのは?えっえっ別の曲?あれ?え?ジョージョアのキャッチコピーって
「ふつうの一日なんて、きっとない。」
だったよな?何一つも?変わらないものを?まだ?愛せるだろうか?は?えっヤバ。即、全否定ヤバ…きっと
ジョージア「米津さん…次のタイアップは弊社商品のキャッチコピー『ふつうの一日なんて、きっとない。』を活かすような曲をお願いできないでしょうか?」
米津「毎日ィ毎日ィ毎日ィ毎日ィ…何一つも変わらないものをォ…まだァ…愛せるだろうかァ………???」
ジョージア「えっなんで…?」
俺「こんなやりとりがあったに違いない…どうなってんだ…?なんだこの曲?CMで流れてるのを聴いた時はあんなに明るくてハッピーな雰囲気の曲だな、と思ってたのに」
ンッタッ!ンッタッ!ンッタタアッ!ンッタッ!ンッタッ!ンッタッ!ンッタタアッ!ンッタッ!ンッタッ!ンッタッ!ンッタタアッ!ンッタッ!
米津「ヴゥヴンっ…!ア゛ーアア゛ーーー…サーセン…」
俺「えっ」
米津「今日も雨模様っ…!一人錆びたチャリで転んだ街道っ!目もくれずに早足で過ぎるアナーキストォ〜…!ガァ〜ンくれた猫ォ…!いつもあちらこちらで愛の強要ゥ…!シケた飯はいらないの驕るリアリストォ〜…」
俺「明るっっっ?!??急に明るっっ!!?「ンチャッッンチャッッ」というEDMの軽やかなリズムと共にジャズの要素も感じられる全身が高揚するようなメロディ…ああ心の霧が晴れてゆく…
…
いや明るいのに歌詞暗ッッッッ???チャリで転んでも無視され?ネコにはガンつけられ…?そこらじゅうで愛を強要され…?シケた飯食わされ…?なに言ってんだ?ススキノか歌舞伎町の風俗街の話してる?爽やかモーニングコーヒーは?どこに…」
米津「鼻じろむ月曜、はみ出す火曜、熱出す水曜、絡まる木曜あとの金土日言うまでもないほどにィ…」
たくさんの米津「以下同文〜」
俺「い、以下同文???よくわかんないですけど、歌詞で、以下同文とか使っていいんですか?マジで歌詞暗ぇこの曲…たくさんの米津って何?」
米津「あなただけ消えないでダーリンッ!爆ぜるまで抱き合ってクレイジィ!この日々を踊りきるにはただ一人じゃあまりに永いのにィ!逃げるだけ逃げ出してレイニィ!捨てるだけ捨てようぜアイシィ!」
俺「ああ〜〜!これだよこれ!CMでも流れてるお馴染みのサビ!明る〜〜い!爽やか〜〜〜!ああ、心に太陽の光が降り注いでいく…」
米津「光るだけが全てならばこの世界はあまりに暗いのに…」
俺「光とか軽々しく言って本当にすいませんでした…」
米津「ラッ!チャルチャルチャチャチャルチャッ!ラッッ!ラチャッッチャチャチャチャチャルチャッチャチッチャチャチャチャチャルチャッチャチッチャッ…」
俺「ラッ!チャルチャルチャチャチャルチャッ!!??!く、口で!?!?」
米津「ぢっ………!!!と手を見るゥ…フゥッ…!あなや記憶よりも燻んだ様相ゥちっとばかしおかしいと笑うセラピストォ〜…ツゥエッ!ツゥエッ!ツゥエッ!」
俺「ツゥエッツゥエッツゥエッ???よ、米津くん???」
米津「意味がない?くだらない?それはもうダサい? 無駄でしかたない?グダグダグダグダグダァ………わかァアアアアアア〜〜〜〜〜〜ってんだァアアアアアア!!クソボケナスゥウウウウ!!!!これが僕の毎日フォゥーー!ハイホゥー!」
俺「ウワァアアアアアアアアア!?!??!?!!き、急にキレるな!!!!」
米津「月曜…火曜…水曜…木曜ォォォォオォオ〜〜〜〜…金曜…土曜日曜…ハイホゥー!ハイホゥー!(リンリン!)あなただけェ側にいてレイディ!焦げるまで組み合ってグルービーィ!日々共に生き尽くすにはァまた永遠も半ばを過ぎるのにィ駆けるだけ駆け出してブリージングッ!少しだけ祈ろうぜベイビィ!!転がるほどに願うなら七色の魔法も使えるのにファッ!ラッ!チャルチャルチャチャチャルチャッチャチャチャチャルチャッ!ラッッ!ラチャッッチャチャチャチャチャルチャッチャチッチャチャチッチャッルラッ…!」
俺「やりすぎだって米津…詰め込みすぎだって……」
米津「月曜(毎日ッ…!)火曜(毎日ッ…!)水曜(毎日ッ…!)
俺「よ、米津…?え…?なぁ…?どうした…?」
米津「木曜ォォオオオ〜〜〜〜!(毎日ッ…!)金曜(毎日ッ…!)土曜(毎日ッ…!)日曜(毎日ッ…!)」
俺「米津ッッッ!!!わかったって!!! もうわかったから!!!そんな毎日毎日歌わなくてもいいって!!!なぁ…米津…なぁ…?少し働きすぎたんだよ…ゆっくりお休み…?俺があたたかいスープでも作るから…なぁ…」
米津「毎日ィ…毎日ィ…毎日ィ…毎日ィ…」
俺「いい…もういいんだよ…俺がそばにいるから…」
米津「僕は僕なりに頑張ってきたのに…毎日ィ…毎日ィ…毎日ィ…毎日ィ…」
俺「大丈夫だよ…大丈夫…もう頑張らなくてもいいんだよ米津…」
米津「何一つもォ……変わらないものをォ……頑張ったとしてもォ……変わらないものをォ……この日々をォ………まだァ……愛せるだろうかァ…」
俺「愛せるよ…愛せるって………俺が…俺が保証するから…うまく言えねーけど…『愛したい』って気持ちさえありゃ…まだ愛せるんじゃねぇかな…?」
…
喜怒哀楽恐怖信頼安心不安希望絶望畏敬歓喜愛欲躁鬱、まるで米津玄師の感情がそのまま脳に流れてくるような感覚だった。世界一短い3分。
インタビューを読んだところ、この曲は自分が納得するものができず何日も苦悩していたとき「ならこの感情を曲にすればいい」と思って作ったという。『毎日』で歌われている内容は「そのときの米津玄師そのもの」と言っても過言ではないのかもしれない。
多くのメッセージソングが「未来は明るい!明日も全力で行こう!」「君が笑えば世界も笑う!辛い時こそ笑おう!」と無責任に背中を押してくるのに対し、この曲は徹底して、背中を押さない。
変わらない日常、果たされない目標、叶わない夢、物語の主人公いや登場人物にすらなれない、希望に満ち溢れていない、どうしようもない人間たちの「毎日」を残酷なまでに淡々と描いている。
でも、それがなによりの救いになる。「変わってないのは俺だけじゃないんだ」「ボケナスって思っていいんだ」背中は押されないけど、支えになる。それだけで人間は案外生きていけるのかもしれない。俺がいま一番欲しかった曲はこれだった。
人間は、決して完璧じゃない。いびつで醜い。自分という存在は、殺したいほどに矛盾だらけで。それでも人間は、だからこそ人間は、日々を命がけで生きている。
俺はこの曲を、そして自分の毎日を愛したい。