「ポルノグラフィティ」のポルノ曲、つまりエロい曲をもっと浴びたい。
冷静に考えれば地上波に出られるはずのない、耳を疑うようなバンド名に反比例して実際のメンバーの見た目や雰囲気もあり、たびたび
「因島の爽やか兄ちゃん」
みたいな立ち位置で紹介されることがあるのですが、ポルノグラフィティがエロについて本気出して考えてみた時の破壊力はFANZA本社が粉々に吹き飛ぶほどです。
エロさとはすなわち「ギャップ」。毎週エステもピラティスも欠かさないほど自分磨きを徹底しているモデルの引き締まった二の腕にハンコ注射の痕があるのが最高なのです。「因島の爽やか兄ちゃん」が、ネチョネチョドエロラブソングを歌っているというギャップに非常に興奮します。例えば
Jazz Up
因島の純情少年が東京という狂った街に出てきてはしゃぐ曲。全編上京したての若者の浮かれきったアホなエロさが爆裂しており
片手でボタン外された 名前も知らない君がにらんだ
気にせずに作業は続いてく 一人暮らしの上京ladyベイベ
という「ヤリチンクソ野郎大興奮連射ブチ☆アゲpartyナイ」のアホみたいな歌詞と、
土生港から 海ぞいの道を初恋を乗せて ペダル踏んでた乱れた呼吸 さとられないように
という思い浮かべるだけで情景が浮かぶ美しく切ない歌詞との落差が最高。
冒頭でも書いたようにエロさとはすなわち「ギャップ」。聴くだけで股間が天まで突き破ってきます。極めつけはサビの
Dive in the girl, dive in the mother's sky 両手を合わせて乳房求めて
「mother's sky」は女性器の隠語。正気とは思えません。メジャーデビューアルバム1曲目にこれをブチ込んでくるヤバさを感じてください。
リビドー
新藤晴一が「頭で考えるエロさ」だとすれば、岡野昭仁は「身体で考えるエロさ」。
もういいんじゃない愛情を超えるような 快感で壊れてしまえ かまわないさ 辿り着いたらそこにはリビドー 舌先に残るザラつき 絡ませ合おう
など、時にリスナーがドン引くほど具体的かつストレートな物言いでエロを本能的に表現します。
股間で曲を書いたようなパワータイプのエロは確実に自分で書いた言葉を自分で歌うことのできるボーカリストしか作れません。
愛なき…
『リビドー』と同じく「性欲」と「愛」が密接に結びつく歌詞がいやらしさを倍増させるパワータイプの曲。
感情さえ砕け散ってゆく 滲んだ窓深と潜む部屋
汗ばむ声喘いだカラダ 不実すぎるほど激しくキミを抱いた
というフレーズにも相手に対する怖いくらいの愛を感じる。
新藤晴一のエロい曲はじっくりと噛みしめるようないやらしさがあるのですが、岡野昭仁のエロい曲には一撃で魂ごと股間を持っていかれるような、そんないやらしさがあります。
渦
いまだポルノグラフィティのポルノの頂点に君臨し続けている旧メンバーTamaの変態的センスが爆発した禁断曲。渦を聴いている時に職質を受けたら確実に逮捕されます。
なにがエロいとかそういう話ではなく歌詞、メロディ、アレンジ、歌唱、演奏、この曲を形成する「全て」が18禁どころか81禁。
支離滅裂なフレーズも多く、いったいこの曲がなんのことを歌ってるのか1ミリも理解できないのに「エロ」「欲」「性」「愛」の文字で脳内が埋め尽くされていく感覚は恐怖でしかありません。頭で聴くのではなく脳味噌で聴く曲。
狼
ぬけるほど青い空のもとで たわわな胸をめぐる狩りの途中 君に出逢ってしまったよ 夏盛り 折古の浜
この歌詞を読んでもらうと分かる通り、
「ビーチで手当たりしだいナンパしてたらめっちゃエロいギャルいた!ウェイ!」
というJazz Upに続く「ヤリチンクソ野郎大興奮連射ブチ☆アゲpartyナイ」楽曲なんですが、異国情緒溢れるメロディとアレンジ、そして岡野昭仁の圧倒的な歌唱力と新藤晴一の言葉の説得力によって「狼のように本能で貪る愛」に圧倒的な説得力が生まれ、どこか上品さすら生まれてくる恐ろしい曲です。
CLUB UNDERWORLD
架空違法ハレンチクラブテーマソング。
綺羅びやかなメロディとアレンジにバキバキに加工されたアキヒトの声が絡みつき、聴くと三半規管がやられ酒を一滴も飲んでないのにベロベロに酔っ払ったような感覚に陥ります。
V・I・P PARADISE「CLUB UNDERWORLD」 秘密のMANHOLE 街のどこかで猫がサカれば開店
当店 NO CHARGE 微笑むNORMA JEAN 欲望全部満たしてあげよう 私どもにおまかせあれ
「当店ノーチャージ」つまり「席料がタダ」そして「微笑むノーマ・ジーン」。ノーマ・ジーンとはマリリン・モンローの本名。つまり「マリリン・モンロー級」に最高キャストが死ぬほどリーズナブルな店にワンサカいて欲望全部叶えてくれる、という新藤晴一の鬼のようなエロ願望を表現すると同時に「人は皆、誰かを演じてる」という真実を浮き彫りにさせられるヤバい曲です。
まほろば◯△
名も知らぬ男女のラブホ街での濃密な一夜を小説のように綺麗な文章でコーティングし我々の脳にブチ込んでくる恐ろしい曲。特に世に衝撃を与えたのがこの一文。
広いベッドの下で君は飛ぶと叫んだ後 のけぞり僕の上で どこまでも淫ら落ちるという
所詮知らない名前を呼ぶこともできはしない 大夜会 未明の渋谷 風のないこの坂の上
「ベッドの下」「僕の上で」
「飛ぶと叫んだ後」「どこまでも淫ら落ちる」
この対比のヤバさがおわかりでしょうか。つまりベッドから転がり落ちるほど激しい動きに女性が「飛ぶ」つまり意識を失うほどの快楽に溺れ「淫らに落ちていく」という、エクスタシーの瞬間を視覚的にも感覚的にも表現しているのです。
にもかかわらず、互いの名前すら知らない。朝になればもう二度と会うことのない関係性という皮肉。本当に好きな人とするよりも名前も知らない相手に「それ」を感じてしまう。こんなにも官能的かつ叙情的な歌詞を私は知りません。
MICROWAVE
失恋した自分の状態を家電に例えた問題作。
「凍えたピザ 乾いたハム 涙 古い記憶」と断片的に単語を並べることで、二人になにがあったのかをリスナーにゆだねてくる手法はシングル曲『あなたがここにいたら』でも使われていました。
が、問題は2番の歌詞です。
そこは冷凍庫 二度と開けない Secret Box 二度と会えない 出会った頃の君さ
甘いメール エロい動画 笑顔 アンダーヘア 触れ合いのようなもの
これほどまで「相手のためならどんなエロいことでもできる」という付き合いたてのカップルの全能感を表した歌詞があるでしょうか。
ペラッペラの部屋着で朝方にコンビニ行くような、頭かきむしりたくなる共感性羞恥とヨダレが出るほどのエロさが融合したとんでもない曲です。
空蝉
『リビドー』と同じく、パワータイプ岡野昭仁の真骨頂が爆発している曲。
欲という名のローションを全身に浴びて摩擦させる身体の音を聞く
卑しくもただの獣と化して君の全てを貪り食らった
「もうやめてくれ…」と目を覆いたくなるような表現の数々と、耳が爆裂する疾走感溢れるメロディ。
しかしサビに突入した瞬間、
「夜はおぼろげェ……うるわしき声ェ……空蝉模様ォゥ…………」
と、まるで賢者タイムのように冷静になりネットリと歌い上げる展開の奇妙さも相まって、いまだ「どうした岡野昭仁」の筆頭として挙げられる曲です。
瞳の奥をのぞかせて
真正面から「不倫」をテーマにしたコンプライアンス、ガン無視曲。8分の6拍子の変則的なリズムと一音ずつ細かく刻まれた譜割りからポルノグラフィティの曲のなかでも「最高難度」の呼び声も高く、メロディを聴いているだけでワインを頭からかぶったようにベロベロに酔えます。
さらに歌詞ひとつひとつの具体的すぎて恐ろしくなるほどリアリティのある表現が、不貞行為にもかかわらず、1ミリもそんな経験ないのに「共感」すらしてしまう、ポルノグラフィティの歴史におけるひとつの到達点とも言える曲です。
デザイア
『リビドー』『空蝉』に続く岡野昭仁エロ大爆発スペシャルの三作目。
吐息を絡ませ また始めよう 一糸まとわぬまま 剥き出しで踊れ
獣が戯れ合うように抱きしめて 首筋 甘噛み くちびるで鼓動感じる
と、まるで官能小説のように本能の赴くままにエロ表現を連発しているにもかかわらず、最終的には
「あなたのことが好きです」
に帰結する潔さ。やはり岡野昭仁の書くエロには圧倒的なパワーと少年性を感じるのです。
ミステーロ
「ポルノグラフィティマジ歌詞の意味わからん選手権」において確実にトップ3に入るであろう奇曲。
黒いベール 巡礼の列 欠けた月と砂漠の都 追いかけてはすり抜けてく 浅い夢のような あなたはMistero
仮に大学の国語の入試で「この文章の意味を正確に答えなさい」という問題が出た場合、私は泡を吹いて気絶している自信があります。
ミステーロほど聴いていて「あぁ〜〜〜〜〜…俺いまポルノグラフィティ浴びてるわ………」と感じる曲はないかもしれません。
それでも断片的な情報から「許されざる恋」「破滅的なエロス」をビンビンに感じて、脳が溶けそうな感覚に陥ります。
カメレオン・レンズ
『渦』の正統後継曲にして最高傑作。
ローマの軍人ガイウス・ユリウス・カエサルの「人は見たいものしか見ようとしない」という名言から着想を得ており、ひいては「どれだけ大切な相手でも全てを分かり合うことはできない」という真実を歌った曲です。
渦と同じく、歌詞、メロディ、アレンジ、歌唱、演奏、この曲を形成する「全て」が異常にエロいのですが、特に気が狂いそうになったのがラスト。
せめて同じ空を見れたらと 君の肩を引き寄せてはみても
そこにはふたつの月がならぶ お互いを知らないまま
Black or White 月蝕の夜
Love or Not 待ち続ける
同じ月を見ていてもそれは「本当の意味で」同じではない、それでも「月蝕」つまり「完全に2人の心と身体が重なり合い、ひとつになる時を待ち続ける」、という永遠の愛の告白とも真のセックスとも受け取れる歌詞に股間が焼け溶けました。
これからもポルノグラフィティの「ポルノ曲」を待ち続ける。