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ミクスチャーブログ

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SixTONES『Gum Tape』は文房具ソング史上一番のド名曲です

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わたくし、アイドルの歌う失恋を主食に生きている化物です。

 

「失恋ソングが良いアイドルは…良い…」

 

というのは孔子の教えですが、SixTONESはその最たる例。基本的にアイドルの楽曲は作詞作曲を別のプロに頼むのが基本で、そこで求められるのは曲の主人公になり切って歌う「憑依力」なんですが、SixTONESはそこがマジでズバ抜けている。全員が別方向に行き切った違う声質を持つからこそ曲に奥行きが生まれ、自分の中に存在しない記憶が刷り込まれていく。

 

田中樹のドラマとか映画見るの何時間でも付き合ってくれそうだけど夜中にだらしない格好で黙ってコンビニ行って長時間ジャンプ立ち読みしてそうな声、森本慎太郎の朝起きたらベーコンエッグ焼いてくれそうだけど飲んだペットボトルすぐ片付けなさそうな声、髙地優吾のスーパーの鮮魚コーナーで良い刺身選んでくれそうだけど炊飯器の予約ボタン押し忘れそうな声、ジェシーのうまいパン屋見つけるの上手そうだけど食べきれないくらい大量に買いそうな声、松村北斗の大事な服はちゃんとネットに入れて洗濯してくれそうだけどたたむのは適当そうな声、京本大我の記念日に高級ディナー予約してくれそうだけど自分の誕生日は忘れてそうな声

 

全て妄想だが、声だけでここまで生活感を感じさせるグループがいまだかつて存在したでしょうか。それぞれの声を主人公に10000字の小説が書ける。そのくらい声に物語が宿っているのです。

それを踏まえて共鳴のカップリングとして収録されたこの『Gum Tape(ガムテープ)』。この世に文房具の曲が何曲あるか知りませんが、間違いなく文房具ソング史上一番のド名曲。YouTuubeのPLAYLISTはもちろんフル音源が特にヤバい。

ゲロ吐くほどに甘く甘い前半の「引越し楽しすぎ同棲マジ最高♡毎日イチャイチャチュッチュ〜♡彼女一生愛してるZE♡」からの「は…?なにその言い方…?マジで誰こいつ…?」の落差。聴く逆流性食道炎とはまさにこのこと。

前半の歌詞の恐ろしいまでの具体性。ノリで入った不動産屋での「えっ、マジで住んじゃう?♡」の一言で決まった同棲生活。家具どこに置く〜?とか掃除ちゃんと当番制ね!とか2人だけの生活のことを決める、付き合ってて一番クソ楽しくてクソ痛いこの時期の描写を田中樹→森本慎太郎→ジェシーという頭抱えるほどガチ感のある声を持つ3人が並ぶことによって歌詞が一気に映像化されてしまう。そしてサビ

僕らを繋いでいたものは糸よりも脆いGum Tape

ダンボールに詰まった笑い声が溢れてく

「きっとこれでいいんだろう」 この時間今頃

君は… 君は… 誰かと荷物を待ってる

ここで初めてこの曲が完全に「失恋曲」だということが明らかになります。この「ほんわかほっこりラブソングかな?はにゃ?」と錯覚させておいて、ギリギリまで焦らしてから一気に地獄を見せつける。完全なるホラー。そしてアズスーンアズで耳にブチ込まれる問題の2番

まだ覚えてる

あの夜の喧嘩

ぶつかる事に愛を感じていた

徐々にひび割れた2人の生活

一言 「もうやめませんか」

呆然としたよ ここは鳥かご

一体誰なの? 君は一体誰なの?

 

彼女「もうやめませんか」

 

オゲェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ

 

あんなに愛してた相手に敬語使われた時の絶望は誰もが知るところですが、中でも一番言われたくない言葉ランキング1位が「もうやめませんか」。ちなみに2位は「ヒザ汚い」

男側が「ぶつかる事に愛を感じていた」とか思ってるのがマジで救えない。たぶん男側は「まだイケる」とか思ってんのが痛すぎる。

「住んでればケンカも増えるけどそれが一緒に住むってことだし、信頼し合ってるからこそっつーか、なんつーか空気みたいな存在?っつーか」

みたいなこと飲み屋でダチ相手にのたまってるのがスケスケに透けて見える。あんなにも自由だと思っていた夢の同棲生活の果てが「鳥かご」。なんという皮肉。

彼女側はもはや男のことを「デカい石ひっくり返したらいる虫」くらいに思っているんじゃないでしょうか。

そしてこれを「髙地優吾」に歌わせるというギャップ。メンバーで一番マジで喧嘩とかしなさそうなのに逆にそれが圧倒的なリアリティを演出している。あまりにも衝撃的なパート。さらに

まだ覚えてる

あっけなく緞帳は下がっていった

全部情けなく感じて笑えない茶番だった

所詮ドラマのようにはいかないと

第三者のように心を守った

松村北斗の現実をいっさい受け入れられないくせに強がって「冷めたフリ」した男の情けなさが痛いほど滲み出ており、聴いていて痔になってしまいました。そして

忘れないで せめて忘れないで

この愛は確かにあったんだと

というサビ前のブレイク部分を京本大我が超美声で文字通り「歌い上げる」ことにより、どこにでもいる男女の他人からしたらマジでどうでもいい恋の始まりと終わりが残酷なほどに美しく彩られていく…

2番サビ後の「オオオオオオーーーーオオオーーーーーーーーォオーーーオオオーーーーオォオーーーーーーーー!!!」のというコーラスによって鮮度がどんどん増していく。とにかく「慎太郎…しんたろ…しんちゃん…」としか言いようがありません。

 

もう、もうやめてくれ

 

だがSixTONESは止まらない。サビ2連発でさらに情緒をグラグラに揺さぶりラストの

Cardboard Love 割れ物注意
Cardboard Love 合わないチューニング
Cardboard Love 割れ物注意
Cardboard Love これでお互い自由に

「Cardboard Love」…和訳すると「段ボールの愛」。段ボールは紙を合わせて作ったもの。つまり2人の過ごした時間が段ボールのように重なり厚いものになっていたと信じていたのだろう。しかし、段ボールは見た目よりも脆く、一定以上の重さには耐えられないし、水分や湿気など環境の変化で簡単に潰れてしまう。二人の愛も「同棲」という名の変化によって少しずつ脆く、弱くなってしまっていた。そしてもう一つ「Cardboard」とは「名ばかりの,生き生きしていない,実質のない.」という意味も込められている。そう、強い愛だと思っていた二人の関係は実は空洞だらけで空っぽの、、、

 

もう殺してくれ

 

虚しさで死んでしまう。俺の墓には「Cardboard Love」と彫ってください。

 

あー!エイブルで良い部屋探してぇー!