俺は自分のこと「明浦路司」だと思ってました。
結束いのりは俺が育てたので、メダリスト読みながら「ああ、いのりさん…いのりさん…きみが偉い子選手権金メダルだよ…」ってずっと泣いてたんですよ。
違いました。
明浦路司とは、米津玄師でした。
BOW AND ARROW聴いて現実を思い知らされました。「いのりさんは俺のパーカーのヒモつかんで心を落ち着かせてるんだ…」って思ってたのに、俺の目の前には誰もいなくて、そのヒモで自分の首絞めてるだけだった。
マジ許せねぇ負けた全部負けたングウ悔しい悔しい悔しい悔しい
俺「メダリストの素晴らしさとは夢を追う者と夢を託す者の描き方の真摯さ…文字通り全てを懸けて自分ではもう届かない場所への想いを託す司(俺)…そしてそれを受け取るいのりさんの想い…一つ間違えれば全てが壊れてしまいそうな危うさ…だからこその尊さ…それを全ページ全コマ逃げること無く真正面から描いている…「その美しい世界にたどり着くために代価もわからず飛び込んだ夢見る小さなわたしたちは数えきれないものを支払っていくんだ」というセリフが示すように綺羅びやかなイメージのあるフィギュアの舞台の裏には数え切れないほどの努力苦悩葛藤がある特にジュニアとなればまだ肉体的にも精神的に未熟な彼ら彼女らが背負う荷物はその小さな背中にはあまりにも大きくそして重たいだがそれを乗り越えて成長していく彼ら彼女らその輝く姿は
米津「今に見なよ きっと君の眩しさに
誰もが気づくだろう」
ギャアアアアアアァアアア!!!!!!!!!!
なんじゃこいつ…2行で俺の遥か上まで跳びやがった…全文字がヤバいんだが特に「見なよ」…この3文字によって二人の信頼関係がどれだけのものなのか、過ごした時間の量、質、その奥行きまで見えてしまう…たった3文字で…?よ、米津…
中部ブロック大会で司(俺)は言った…「選手みんなが努力の末手に入れようとする金メダルは人の上に立つ勇気がない人が偶然手にできる訳がないんだ」と…いのりさんは答えた「任せて」と。そしていのりさんは奇跡を起こした…そう、いのりさんは覚悟をしたんだよ。「人の上に立つ」覚悟を…4回転を初めて跳んだときもそうだった。スケーターでもわずかな者しか成功することのできない4回転を成功させることそれはつまり周りに「自分は天才だ」と知らしめることになる…それは良い面だけではない注目を集めることでやっかみを持つ子供も態度を変えて擦り寄ってくる大人もたくさんいるだろう…しかしいのりさんは言った「私わざとです、わかってて4回転を選びました」と…「だってその注目に負けない人が世界一のメダリストになれると思うから!」と…わかるか?米津?フィギュアをやりたいとすら言えずにオドオドすることしかできなかったいのりさんが、だ…過去のいのりさんを知っている人間ならば誰もが思う「本当にあの時と同じ子?」かとそんないのりさんに対して俺は
米津「見違えていく君の指から今
手を放す」
おまっ、おまえーーーーーーーっっっ!!!!!!!!
あいつ絶対に自分で泣きながら歌詞書いてるだろ…こんなのを正気で書けるはずがない…
だがメダリストはいのりさんと司(俺)の話だけじゃねぇ。脇役だと捉えられてしまうような人物たちにもしっかりと焦点が当てられているそれがこの漫画の素晴らしさなのだ。それがわかるか?米津?
例えば十南町レイクFSCに所属している亜昼美玖…彼女もまた将来を嘱望された選手の1人だった…しかし活動していたアイスリンクの閉館が決まってしまい美玖はスケートを辞める決意をする…でも最後にコーチ鴨川振付師のジュナのためそしてリンク出身の選手たちのために大きな結果を残そうと全日本ノービスに挑んでいたんだよ…しかし天才・狼嵜光の直後の演技という不運が襲う…恐怖すら感じるほど完璧な演技…観客は口々に言う「光ちゃんの後に滑る子みんなかわいそう、もう絶対勝ち目ないもんね」と…前半から美玖は光の作り出した会場の雰囲気に飲まれミスを連発してしまう…それを見て鴨川やジュナですら「なんであんなにがんばってきた美玖がこんな目に遭うんだ」と肩を落としてしまう…だが美玖は決して諦めなかった最後の最後までスケーターであり続けたのだ…本当に立派だ偉いよ…こんな小さい子がだぞ?米津おまえはそれをわかって
米津「そう君の苦悩は君が自分で選んだ痛みだ
そして掴んだあの煌めきも全て君のものだ
ンギィイギギわかってんじゃねぇか米津…
そうだよ…俺たち大人はなにもしちゃいねぇ…ただほんの少し道を示しただけだ…その道を選んで苦しみ悩み泣いたのはほかの誰でもない子供たちだそうやって掴んだものは大人のものじゃねぇ子供のものなんだよ…例えば全日本ノービス…狼嵜光には誰も勝てないんだ観客の全員がそう思っていた…俺すら…しかし、いのりさんだけは違った…言うんだよ「絶対に光ちゃんに勝ちたい、そのためだったらなんだってできます。先生、私をもう一度信じて。今度は私が先生を金メダリストのコーチにします」と…フィギュアを始めた頃は「11歳から始めるなんてかわいそう」と言われ陰であれだけ泣いていたいのりさんが言うんだよ…「金色を獲ってきます」ってよ…これがどれだけのことかわかるか?米津?そんな言葉を聞いたら俺にはもう跳べ…行け…降りろと祈ることしか出来な
米津「行け 決して振り向かないで
もう届かない場所へ
行け 行け
君はいつだって輝いていた!」
よっっっ米津ーーーーーッッッ!!!!!!
もうやだ…なにが「君はいつだって輝いていた!」だよ。なにを自分だけがいのりさんの全てを知ってるみたいなテンションで言ってんだよ…俺なのに…いのりさんを見つけたのは俺なのに…
夏合宿の日、俺は言ったんですよ。
「俺はスケートを始める前のいのりさんもだめなんかじゃなかったと思うよ。初めて会った時のいのりさんも今のいのりさんもずっと頑張り屋で偉いいのりさんだったよ」
って…フィギュアをやろうがやるまいが、いのりさんは偉くて、美しくて、かわいくて、輝いてて、よ…米津…
負けた…俺がどんだけ何千、何万字ごたく並べようが、米津が放つたった数百文字、たった2分55秒にまったく手が届かない…
はぁ〜〜〜、もうやってらんねぇわ。もう文章書くのがアホらしくなってくるね。はいはい。お疲れ。
だが米津、最後にこれだけ言っとくわ。よく聞け。
あの、ボクは、岡崎いるかちゃんが大好きなんだけど、米津くん、キミは?

いるかちゃんのイメソンとか作る気、ない?いや作ってくださいお願いします
