ダチョウ倶楽部の熱湯コントで
上島「押すなよ!!絶対押すなよ!!」
肥後・寺門「…」
上島「いいか!?絶対押すなよ!!」
肥後・寺門「…」
上島「いや押せよ!!」
って叫んで勝手に自分で落ちる、みたいなくだりあるんですけど、それが「劇場版ポケットモンスター みんなの物語」主題歌ポルノグラフィティの『ブレス』なんだと思いました。
ポルノグラフィティの良さって「ノリノリのメロディにナヨナヨな歌詞をゴリゴリに力入った声で歌う」ってところにあると思ってて、以前『ジョバイロ』がリリースされた時のなんかの雑誌インタビューで「新藤晴一さんの書く歌詞は難解なものが多い印象ですがボーカルとしてどうですか?」みたいなことを聞かれてそれに対して岡野昭仁が
「えっ?難解ですかね?思ったことないですけど」
とか答えてて「な、なに言っちゃってるの??岡野くん??」って爆笑したんですけど、このアンバランスさこそがポルノグラフィティ、メロディも歌詞も声もある意味全部が独立してるからこそ、ポップなメロディに新藤晴一の書く小難しい捻くれた歌詞を岡野昭仁がフラットにまっすぐ歌うからこそ、逆にその全てがスッと入ってくる。
『ブレス』もメロディは底抜けに明るくて、一見するとワンフレーズワンフレーズは齢ひとケタ代にもわかるような易しくて優しい言葉使ってるのに、節々に感じるキツめの毒。無理矢理ポケモンで言うとラッキーがどくどく使ってくる、みたいな。顔かわいいのにやってること船越英一郎のドラマの犯人のそれ。
一発目のフレーズから
「ポジティブな言葉で溢れているヒットチャート 頼んでもないのにやたら背中を押す」
ってバチバチ喧嘩売ってる。いやヒットチャートの常連がそれ言うのかよ。
いわゆるよくあるメッセージソングが「さぁ 未来は明るい!明日も全力で行こう!」とか「君が笑えば世界も笑うよ!辛い時こそ笑おう!」てなことを言いたがるのに、ブレスは終始「お前はお前でいいんじゃね?知らんけど」「未来なんて生き物じゃねぇんだから逃げねぇから なんもしないとあっちから来ることもないけどな」って言ってくれるし、フラフラで疲れて立ち上がれないときに「ガンバレ!立ち上がれよ!」って喝入れるんじゃなくて、「先長いんだし休みゃあいいじゃん 『全員死ね!』って言いながら浴びるほど酒飲んで女抱きゃいいじゃん」ってハナクソほじくりながら言ってくれる。この距離の取り方、この曲を評して『応援歌』って言う人もいるんですけど、よくよく歌詞読むと別に応援してないっていう罠。
「やたら背中押すヒットチャートウザい」
そんなネガティブ全肯定のポジティブ全否定の歌詞を、乱暴な言い方すればニート丸出しの歌詞を、太陽みたいな声の男がやたらハキハキ歌う、するとどうなるか。
【#ポルノグラフィティ】昨日の #cafein11 で初フルオンエアされた新曲『ブレス』✨昭仁さんの表現力豊かな歌声と、晴一さんが書き下ろした温かく背中を押してくれる歌詞が最高にピッタリだなぁと思いました🎶新曲のご予約受付中❤️店頭にない旧譜はご注文承ります😊(桜) #ブレス pic.twitter.com/9LtfMHn01D
— タワーレコード西武東戸塚店 (@TOWER_Totsuka) 2018年6月12日
いやガッツリ背中押されてんじゃねえか。なに聴いてたんだよ。
ポルノ「背中押してくるポジティブソングうぜぇ」
「わかる」
ポルノ「今のままでもいいだろうが」
「わかるわかる」
ポルノ「ヒットチャートに自分重ねるんじゃねえよ」
「わかるわかるわかる」
ってブンブン首振ってたのに、最終的には背中押されてるし、変わんなきゃって思うし、歌詞に自分重ねてる。そう、人の背中押したいときって押す必要はない。受け入れて、認めて、そっと抱きしめてあげる、それだけで勝手に自分の手で自分の背中押すんですよ。ポルノにとって「押さない」は「押す」なんですよ。「ガンバレ」って歌わないことがなによりの「ガンバレ」になってる。マジで思う壺。いつの間にか新藤晴一の、岡野昭仁の、ポルノグラフィティの手のひらの上でクルクル回ってる。
でも俺はずっとその上で踊ってたいって思いました。ぬるい熱湯風呂でバシャバシャやってる上島竜兵みたいに。