kansou

Fight Song

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映画「カイジファイナルゲーム」なんて元から存在しなかった

悪い夢だった。

 

どこがつまらなかったか、なにが面白くなかったのか、論じる気力もない。思い出したくもない、思い出そうとすると頭が割れるように痛む。脳みその血管が切れそうになる。そもそも「カイジファイナルゲーム」なんて元から存在しなかったのかもしれない。いや、してはいけない。

関係者は本当にこれでよかったのか、なぜ止めなかったのか。「これ本当に面白いと思ってますか」「一回根本から考え直しませんか」「正直トチ狂ってます」「これで金取るんですか」「悪いことは言いませんからやめましょう」なぜ誰も口にしなかったのか。心はどこにあるのか。怪物を作っていた自分こそがいつしか怪物になっていたのか。もう誰を恨んでいいかもわからない。こんな愚かなものを産み落としてしまった人間を、地球を、宇宙を恨めばいいのか。

 

カレーを食べに来たのに、

「ほら、お前の好きな味はこれだろ?」

と皿に乗ったウンコを顔面に塗りたくられた。思えば最初から間違っていたのかもしれない。入った店はカレー屋じゃなく、ウンコ屋だった。

「実写化はつまらない」「実写化にも面白い作品はある」「原作が正義」「原作知らなければ楽しめる」「原作者が関わってるなら許せる」「やっぱりオリジナルストーリーは駄目」そんな論調がなんの意味も成さなくなってしまった。語るだけ無駄。実写化。原作。オリジナル。人気作。なにも関係ない。なんの保険にも言い訳にもならない。そこには純然たる「ウンコ」という事実だけが存在していた。「面白い」「つまらない」という尺度で測ることすらおこがましいウンコがそこにはあった。決して水に流すことができないウンコオブウンコが。

 

今となっては出演していた役者も本物かどうかすら怪しい。「その役者の姿形したなにか」に見えた。藤原竜也なんて出てなかった、そう思い込むことでしか自分を保てなかった。覚えているセリフはひとつもない、セリフがセリフとして入ってこない、ただの音として入ってくる。役者の姿形をしたなにかが血管を浮き立たせて大声で五十音のなにかを叫んでいたが、わからない。そこに響くものはなにもない。ノイズ。「うるさい」「もうやめてくれ」それだけだった。

自分の目と耳がいらなかった。銃で撃ち抜いてほしかった。映るものすべてが「嘘」に見えた。嘘を、作り物を楽しむのが映画、エンターテインメントなのに、はっきりと「この人たち嘘の世界でなに必死にやってるんだろう」と思ってしまった。いつか、いつかなにか変わるはず。ほんの少しでも心が動く瞬間が来るはず。それだけを願って画面を眺め続けた。すべては幻想だった。もう本物がなにかも俺にはわからないが。

 

悪夢のあと、ずっと「1,900円」というお金と「2時間半」という時間でできたことを考えていた。食事に行けた。温泉に行けた。動物園に行けた。遊園地に行けた。水族館に行けた。カラオケに行けた。ボウリングに行けた。なんだってできる。どこにだって行ける。世界にはこんなにも楽しいことが溢れているのに、なんで自分はあの場所に居たんだろう。自ら自由を手放した己の選択と運命を呪った。

「これを観るか観ないか」ということ自体が大きなギャンブルだった。そして俺は賭けに負けた。失ったものはあまりにも大きかった。はじめて「ありがとう」と言えた日、 はじめて「好き」と言えた日、母の作った料理の味、父の背中の温かさ、あの子の握った手の冷たさ、すべてが黒く染まっていくのがわかった。人生は完全に「観る前」と「観た後」に分断された。もう戻れない。俺にはなにもない。

 

…だが、全てを失ったからこそ強く思う

「一人でも多くの人間をこの作品から救いたい」

だから思い出す。

 

ー「カイジファイナルゲーム」ー 

 

…チクショー!日本はオリンピックの影響でスゲー不況になっちまった…マジメに働いてるけど全然金ねぇ〜〜!どっかに良い儲け話ねぇかな〜〜〜!

 

…え?どこかの塔のテッペンにあるカードを取ることができれば億万長者になれる究極のゲーム?

なんか知らんけど事前にその塔の場所を得ることができた俺!

塔の少し離れたビルから細い鉄骨をぶら下げて、そこを一歩一歩綱渡りしながらカードを取る…落ちたら死ぬけど…いけるべ!

アッ!風と妨害でバランスがッ…

い、一か八か飛び込めェエエ!

クソッ…一瞬触れたけどダメだったか…

えっ、カードは実は指紋認証だって?最初に触れた人間が勝者…?

これが俺の必勝法だァ!

 

…次は自分たちの資産を天秤にかけてどっちが多いかを競い合い、勝ったほうが総取りできる究極のゲーム!

知らねぇジジイの金だし、別に俺が負けても1円も損しねーけどがんばるぜ!

よくわかんねーけど、これに勝たねーと日本ヤベーんだって!

クソッ!相手の妨害やらなにやらで全然こっちの資産が増えないッ!

どうする…?そうだッ…!

俺ちょっと他のギャンブルで金稼いできまっす!なんのギャンブルやるかも決めてねーし!勝てるかもわかんねーけど!ジジイとりあえず10億よこせ!

これが俺の必勝法だァ!

 

…唯一やってるギャンブルを見つけたぜ!

10の番号の中から1つのアタリ番号を当てないと死ぬ…当たれば100億円の究極のギャンブル!

なぜかアタリ番号は「操作しなければ前回と同じ」らしい…理由はまったくわからねーけど…

ということは、操作されないように電気室に忍び込んで番号スイッチのブレーカー落とせばいいんじゃね!?

その超重要な電気室には…今日はたまたま誰もいないって!協力者の男まかせたぜ!

アタリ番号は前回このギャンブルに賭博していた奴らが捨てたゴミの中のハズレ券から計算しよう…協力者の女まかせたぜ!

遅い…まだか…もうタイムリミットが…

アッ、あれは協力者の女…!

アタリ番号は?

えっ、なんて?

よく聞こえない…口の形は「うー」と言っているように見えるな…「きゅう」なのか…?「じゅう」なのか…?どっちだ…「きゅう」?「じゅう」?く…くそっ…ここはカンだ…よし…10だ!

いや…?まて…?

アッ!あの手のカタチはッ!あの女が登場からバカみたいにわざとらしくミエミエに流れと関係ないところで何回もやっていた映画監督の「キュー!」のポーズッッ!と、言うことは…!「9」が正解だッ!

これが俺の必勝法だァ!

 

…金!間に合ったッ!えっ?時間切れだって?

残念でした〜〜!実は時計早くしといたからあと5分あるんで〜〜す!

どうやって天秤に金乗せるんだって?

ドローン使って運べばラクショーよ!

えっ…そ…それでも金が足りない…負けた…

チャリーン

たまたま時計に挟まってたコインがこっちに転がってきた!?

コイン1枚の差でこっちの勝ちッ!

ジジイは死んだァ!

これが俺の必勝法だァ!

 

…最後はジャンケン!

これ勝ったら日本救えちゃうんだって!

3回勝負!1回でも勝てば俺の勝ちだぜ!

相手はジャンケンがスゲーつえー奴…

あいこでも相手の勝ちになっちまうんだって…

でも勝った!

えっ…勝ったけどこの勝負に意味はない、だって?

負けた…

と見せかけて〜?

実は負けたけど勝ったでした〜〜!

こっちこそ最初から勝負に意味なんかなかったんだよヨ〜〜〜ン!

ジジイが死ぬ前に裏で手回してました〜!

これが俺の必勝法だァ!

 

…スゲー金入った!ヤッターー!

アレ…?

ま、また金もらいそこねた〜〜!チクショーーー!

日本な〜〜んも変わってないし!金もないけど!ビールうまいから!ま、いっか!

 

ーENDー

 

カ、イ、ジ…?なんですか…それ…?