高校生の時、冬休みにスーパーマーケットでアルバイトしてたことがあった。
業務内容はいわゆる「品出し」というやつで、担当していたのは『青果』、野菜や果物なんかを取り扱う部門だった。
客が買って少なくなった品物を陳列棚に補充していくという至ってシンプルな仕事だったんだけど、安売りの日や土日祝日はやっぱり忙しく、ひっきりなしに客も来る。
このバイトをしてびっくりしたのが開店前から並んでスーパーに行く人がこんなに大勢いるのかと、当初は面食らって「テレビで紹介されたラーメン屋かよ」「パチンコ屋の新台入替かよ」なんてちゃかしていたが、マジで角台を狙いに行く勢いで人がごった返してやってくるので、そんな軽口を叩く余裕もなく、ヒーヒーしながら品出しをしていた。
それとは正反対に平日の朝方なんかはやっぱり全然客が来ない。働いていたスーパーは平日は特に安売りもしなかったから、なおさらだ。にもかかわらず、開店前にビタッとドアの前に並んでまでスーパーに来る意図がまるでわからん客が多く、ロクでもねぇ客が多かった。
落とした野菜をなんの遠慮もなく陳列棚に戻すジジイ、値引きシール待ちババア、さんざん試食だけして絶対買わない子連れ主婦などパンチの効いたお客様ばかり。いらっしゃいませ、もう来んな〜。
それでも、悪い客もいれば気の良い客もいるというのが世の常で、スーパーの品出しという単純な仕事ながら「ああ、やっててよかったな」なんて思うこともたくさんあった。
一番記憶に残ってるのが、夕方によく来る広瀬香美によく似たババアで、これがまたよくに「どう?絶好調?真冬の恋」なんて話しかけてくるババアだったもんで最初は煙たがっていたのだけど、変なクレームをつけるわけでもなく、「今はデコポンが旬なんですよ」なんてちょっとすすめると「あら?じゃあアンタ頑張ってるからお一ついただこうかしら」と買ってくれるスーパーからすればかなりありがたい客だった。
そのスーパーでは焼き芋を機械で焼いていて、90分ローテで2種類の焼き芋を焼くのが品出しの仕事だったんだけど、ある日年末ということもあって忙しすぎて焼き芋を焼くのを忘れていたことがあった。
すると、焼き芋を目当てにしていた焼き芋ジジイに「いつまで待たせるんだ!どうなってんだこのスーパー!」とすごい剣幕でまくし立てられていた俺を横で見ていた広瀬香美が、
「しょうがないじゃない、この年末の忙しい時期だもの、忘れることもあるわよ、もう少し待ちましょうよ」
と、庇ってくれたことがあってすごく救われた。
「お客様は神様」なんて言葉をよく聞くが、その時のババアは俺にとって確かにロマンスの神様でした、どうもありがとう。