とんでもないことに気づいてしまいました。
どんな文章でも最後に「遠くで、蝉時雨の音が聞こえた気がした」と書き足せば上質な「純文学」になることに。
「蝉時雨(せみしぐれ)」とは、一斉に蝉が鳴く様子を雨音に例えた、夏の訪れを感じさせる日本ならではの美しく雅な言葉。
これを使うだけで簡単に文豪になることができるのです。こんなふうに。
--------------------------------------
サキちゃん、お早う(^з<)😄オレはさっきお風呂入ったよ💗サキちゃんとお風呂いきたいナー(笑)❗(^o^)ナンチャッテ(^_^)(^з<)
遠くで、蝉時雨の音が聞こえた気がした
--------------------------------------
クソキモジジイのライン文章が一瞬で切なさを感じる文章になりました。
ひょっとしたら、この「サキ」という女性は、もうこの世にはいないのでは…?それを知りながらジジイは永遠に届くはずのないメッセージをサキに送り続けているのでは…?
そんな物語が浮かび上がってくるのです。
次の文章です。先日、私宛てに届いたメールの文章です。
--------------------------------------
私はテレサ・ハイジ夫人、62歳で、 現在肺がんのためイスラエルの私立病院に入院しています。 私は4年前、夫の死の直後に肺がんと診断され、 夫は私にすべてを残してくれました。 私は肺がんの治療を受けている病院でラップトップを持っています 。
私には亡くなった夫から受け継いだ資金があり、 その合計はたったの 120 万ドル (USD$1,200,000,00) です。今、私が人生の最後の日に近づいていることは明らかです。 もうこのお金は必要ないと思います。 主治医は私に、 肺がんのせいで余命1年は無理だということを理解させました。
このお金はまだ外国銀行にあり、 経営陣は私を本当の所有者として、 お金を受け取るために名乗り出るか、 病気で来られないので代わりに受け取る委任状を誰かに発行するよ う手紙を書きました 。 銀行の対応を怠った場合、 資金を長期間保管していたために没収される可能性があります。
このお金を外国銀行から引き出すのを手伝っていただけるのであれ ば、 その資金を恵まれない人々を助ける慈善事業に使用することに興味 があれば、連絡することにしました。 私に何かが起こる前に、 これらの信託基金を誠実に扱っていただきたいと思います。 これは盗まれたお金ではなく、危険も伴いません。 完全な法的証拠があれば、100% リスクがありません。
合計金額の 45% を個人使用に、55% を慈善事業に寄付していただきたいと思います。 私の最後の願いを台無しにするようなことは望んでいませんので、 私の心からの願いを達成するために、 この件に関してあなたの最大限の信頼と機密保持に感謝します。 最近この国で接続エラーが発生したため、 この手紙をスパムメールで受け取った場合は、 大変申し訳ありません。
テレサ・ハイジ
遠くで、蝉時雨の音が聞こえた気がした。
--------------------------------------
「遠くで、蝉時雨の音が聞こえた気がした。」によって一気にリアリティが増しているのが分かりますか?過去に愛した恋人からの最後の願いのような気がしてきました。
もし、この一文が書かれていたら
「テレサ…久しぶりだね…俺でよければぜひ協力させてもらうよ…」
そう返信していたかもしれません。
最後の文章です。私の数年前の日記です。
--------------------------------------
尊敬してる高校の先輩のシゲさんとキャバクラ行ったんですよ。
シゲさんは、最近彼女にフラれたってこともあってなんか「飢えた獣」みたいになってて。目バッキバキで。キャバクラ入って速攻で気に入った女の子見つけて2時間ずっと口説いてて。
最近シゲさん「メンタリストDaiGoのYoutubeチャンネル」めちゃくちゃ見てて、付け焼き刃の心理学バカみてぇに使うんですよ。
サルの赤ちゃんでも引っかかんねぇだろみたいな、でも見え見えのそれがなんか逆に「カワイイ」とか言われて。さっすがシゲさんですわ…。俺はヘルプの子と必死になって鏡月かき混ぜてた。
それから24時くらいになって店出て普通に解散になったんですけど、なんか違和感あって。シゲさんと飲むときは必ずカラオケ1時間だけ行って最後はラーメン食って締めるんですよ。でもその日は「俺、ちょっと寄るとこあっから。またな」とか言ってて。
でもまぁラッキーって思って、そのまま家帰って全裸で寝てたんですよ。
…そしたら夜中の2時くらいにライン鳴って。シゲさんからで。
シゲさん「いまなにしてる?」
俺「え?あ、すいません寝てました」
シゲさん「ちょっと今から行くから。部屋貸してくれ」
俺「どうしたんですか?」
シゲさん「さっきの女連れてくから。俺の部屋汚いからお前の部屋貸してくれ。お前自分の部屋で寝てていいからリビング貸してくれ」
(は…?なに言ってんだこのコイツ…とうとう頭イカれたか…)って思ったんですけどシゲさんには頭上がらないんで、二つ返事で
「シゲさんのためなら!」
って即返したんですけど、冷静に考えたらめちゃくちゃ最悪だよ。「寝てていいから」じゃねぇんだよ。なにする気だコラ。って思ってたら、5分後シゲさんと女やってきてたんですよ。速!?コイツ俺がOKする前からこっち向かってきてたな…なんじゃこいつ…
女「え…ここってシゲさんの家…?」
シゲさん「いや、後輩の家だよ」
女「大丈夫なの…?いるんじゃないの…?」
シゲさん「大丈夫だって寝てるって言ってたし。それにアイツ俺に頭上がんねぇから」
こんんのクソ…さすがに「なにが頭上がらねぇだ下からヤリでアゴ突き刺してやろうか?」って思ったんですけど、逆らおうとすると肩パンの痛さ思い出すんですよ…助けて…
それで最初はリビングでテレビとか見ながら酒とか飲みながらなんでもない話してたっぽくて、
シゲ「彼氏とか今いんの?」
女「えー、全然いないよー、1年くらいいない」
シゲ「え?こんなカワイイのに」
女「やだー、もう!シゲさんだってカッコいいじゃん!彼女いないの?」
シゲ「俺も全然いねぇー。似た者同士かもな俺ら」
とかやってて。なにこの茶番?キッモ。超つまんねぇ。だからテメェちょっと前まで彼女いただろうが。なにが「似た者同士」だボケ。
てゆうか、会話を寝室で息ひそめて全裸でドアにコップ当てて聞き耳立ててる俺、なに?え?ここ、俺の家だよな?あれ?え?なにしてんの俺?
シゲ「俺のこと…どう思ってんの…?」
女「…え…イイな…って思ってるよ…店終わってついて行ったりとか…他の人にしないもん…」
シゲ「そうか…俺もお前のこと…イイ…って…思ってるよ…守りてぇ…」
女「え…ほんと…?うれしい…」
なに雰囲気作ってゆっくり喋ってんだこのバカども?
三流恋愛リアリティーショーやってんじゃねぇよ。なにが「イイって思ってる」だ。なんだ「イイ」って。なんだそのフワッとした印象。きっしょ。
…いいか?テメェらがな、マジおっぱじめやがったらめちゃくちゃいいとこで反町のポイズン大音量で流して全裸で奇声発しながら乱入してやッッから覚悟しとけよクソが…
ー10分後ー
シゲ「え…マジでいいの…?」
女「うん…シゲさんなら……」
シゲ「マジやさしくすっから………」
女「だいすき…」
アァッァアァッァアァアアアアアア?!?!??!マジ!!???マジかシゲ?!???マジでヤるのか?!?????オ!!!!!!イッッッッッ!!!!!!!オイ!!!!!シゲッッッッ!!!!!
シゲェエエエエエエエエエエエエエエーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!
遠くで、蝉時雨の音が聞こえた気がした。
--------------------------------------
どうでしょうか。最初から最後までキショいやつしか出てこないキショい話のはずなのに、最後にまるで菅田将暉主演の映画にでもなりそうな雰囲気すら生まれました…
最強の文章法。みなさんもぜひ使ってみてくださいね。
遠くで、蝉時雨の音が聞こえた気がした。