昔はボロボロの床屋とか銭湯に置いてあるような、男臭ぇ漫画ばっかり読んでました。『ゴルゴ13』とか『ドカベン』とか『あしたのジョー』とか『銀牙 -流れ星 銀』とか『サラリーマン金太郎』とか。筆圧強めの、Gペン折れんじゃねぇかってくらいに濃いやつ。
それと、人間の業、汚い部分だけを切り取ったようなやつ。裏切りに次ぐ裏切り。ページめくれば「金」「暴力」「セックス」「ドラッグ」「ロックンロール」…。そんな人生を送ってきました。
そして、俺の最近のKindleの本棚がこれ。
なんだこのラインナップ。1人暮らしのOLか。デザイン系の専門学生か。ネコ飼ってんのか。居酒屋でラーメンサラダ頼むタイプの女の本棚だろこれ。マーガレットコミックスて。pixivコミックて。
当方、ゴリゴリのアラサーの男です。気がついたらこうなってました。俺だってもっとカーッ!と熱くなるような漫画読みてぇよ。血で血を洗いてぇよ。
でも…悔しいかな…全部めちゃめちゃ面白いんすよ…。腕とかもげないのに。
町田くんの世界
みんながイメージした「優しさ」の集合体が町田くんで、もう基本キレイなことしか起きないし、町田くんをはじめ出てくる登場人物みんながとにかく良い人。マジで逆アウトレイジ。実写映画化とかされたら絶対ポスターに『全員善人』って書いてる。
普通ここまでキレイだと読んでたらヘドしか出ないハズなんですけど、読み終わったらこっちまで「…世界って、人ってこんなに美しいんだ…優しいんだ…地球抱きしめたい…みんな大好き、小鳥にエサとかあげたい」ってなるから恐ろしい。
安藤ゆき先生の『町田くんの世界』に説得力を持たせるだけの絵の空気感とかセリフの運び方とかが尋常じゃないくらい上手くて、この感じで怪しいセミナーのパンフレットとか書かれたら確実に落ちる自信ある。
凪のお暇
心も身体もボロボロになり仕事を辞めた節約上手な凪のゆるゆるな日常だけを描く漫画なのかなと思いきや、元彼・慎二の比重が意外とデカくて、最初は「はぁ…またこういうパターンの恋愛漫画かよ」ってちょっとゲンナリしてたんですけど、慎二の生き方ウマいようでめちゃめちゃヘタクソな感じが愛おしくて愛おしくてしょうがなくなりました。俺の負けです。
慎二の凪に対する行為ってもろモラハラで同情の余地まったくないし、絶対復縁とかさせちゃいけない、それはわかってる、わかってるんですけど、どっかで慎二を応援してる俺がいる。凪と我聞の回想シーンの入るタイミングが絶妙すぎるんだよ。心理描写が、人(にん)の描き方が上手すぎる。たしかにこの紙面の中に凪は、慎二は、生きてる。絵はコミカルなのにグサグサ刺さってくる。ずるい…。
私の少年
これ男女逆の立場だったら超炎上案件のめちゃめちゃ気持ち悪い設定で「うわっ絶対手ぇ出さねぇ」と思ってたんですけど、サンプルちょっと読んで即買い。1ページ1ページの描き込みがハンパなくて息するの忘れるくらい綺麗。
好きなページたくさんあるんですけど、特に1巻の聡子の苦笑いは「世界漫画家苦笑い選手権」で全漫画家中ダントツの1位なんじゃねぇかっていうくらいの完璧な苦笑いで印刷して額縁に入れて家の玄関に飾りたい。
この話、どう理解していいか未だによくわからないんですけど、言えることはただ一つ。聡子と真修には幸せになってほしい…それだけ、それだけを望む漫画です。
あと、これは完全に俺が悪くて、少年の名前が「真修」ってんですけど、俺の中での「ましゅう」って「マシュー南」しかいなかったんで、どうしてもね、藤井隆の顔がチラつきますよね。
…どうしちまったんだ俺は。この前も『君に届け』の最終巻読んで泣いたしよ。慌てて『バトル・ロワイアル』読んで黒沼爽子から相馬光子、風早翔太から桐山和雄で無理矢理バランス取ったけど、危うく12年で3年を描く君に届けの時の流れの遅さに飲み込まれるところだった…。
なんでだ。線の細いナヨナヨした漫画一番嫌いだったはずなのに。俺の中の江田島平八が、ラオウが、岩鬼が、力石が「帰ってこい!!」って叫んでる。
でも、こういう漫画をお風呂上がりにハーゲンダッツとか食べながら読むのが最高。匂いつきの加湿器とかたきながら。