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赤ん坊から老人までが腰振るアルバム星野源『POP VIRUS』感想

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今年の夏に三浦大知の『球体』ってアルバムがリリースされて収録曲1曲1曲のつなぎ目があまりに自然すぎて聴きながら意識トビかけて軽トラと相当エキサイッッッッ!!!エキサイッッッッ!!!しそうになったんですけど、星野源『POP VIRUS』それとまったく同じ類の妖怪アルバムでした。今日生まれた赤ん坊から明日死にゆく老人までが否応なく腰振る呪いのアルバム。

まず、腹立つのがどの曲も音にぺんてるのぶっとい油性マジックで「星野源」って書いてます。絶対あいつ小学生の頃ファミコンのカセットに「5ねん2くみ ほしのげん」って自分の名前書いてたタイプ。どの曲のどの部分切り取っても誰がどう聴いても星野源以外の何者でもない。イントロクイズならぬ「曲中1分17秒クイズ」出されても一発で答えられる。たぶん星野源知らない赤ん坊にこれ聴かせても泣きながら「オギャオギャン」って答えられる。

バチバチに洗練されたメロディの中に『Pop Virus』のバァアアアァァァァアア!!パリィィィン、「Continue」のチコチコチコチコチコ、『Pair Dancer』のぴゅるぴゅる、『サピエンス』のアウトロ、『Hello Song』のチキチキチキチキチキチキetc...0.00000001秒間違えればただの耳ざわりにしか成りえないような音を「ここ!」しかないような完璧なタイミングで使って眠たくなるようなゆったりしたリズムの中に緩急織り交ぜてくるところだとか、単なるほっこりソングかと思いきや「頭にくる」だの…「苛立たしい」だの…「いかれた」だの…「うんざりだ」だの…肝冷えさせるドライアイスフレーズをノーモーションでぶち込んできたりだとか、気分移ろいやすい人間どもの気を耳を引くのがべらぼうにうまい。特に効果音の使い方の上手さ、もはや任天堂のゲームのそれ。『Pop Virus』とか最初聴いたときイヤホンぶっ壊れたかと思った。

で、各曲の完成度もさることながら、なにより度肝抜かれたのが「1枚のアルバムとしての数珠つなぎ感」。料理のフルコース、お通しからの前菜サラダ食ってスープ飲んで魚食って口直しのシャーベット食って肉料理、そしてデザート。この並び以外ありえない完璧な曲順。『星野源のオールナイトニッポン』で、

リアレンジってまったくしていないです。ミックスがちょっと違うだけです。「リミックス」って言うとなんかいわゆるは全然違う音にするのがリミックスっていう印象があると思うんですけど。「ミックスをし直す」というのはまったく同じ音素材を使って、バランスがちょっとだけ違うという。

(中略)

曲の聞こえ方って本当にその場所とか曲順とか時間によって全然違くて。

だから、このアルバムに入ってる既発曲っていうのはたぶん今まであなたが買ってくれた、あなたが聞いていた曲の聞こえ方とは全然違くなっていると思います。

そういう意図で、このアルバムっていうのに一番ピッタリな曲ということで、カップリングも含めて収録曲は選びました。

みたいなこと言ってましたけど、ほんの些細なちょっとの音の変化のはずなのに既発曲の聴こえ方がまるで違う。耳が溶けきって脳から汁出るほど聴いてきた『恋』『Family Song』『肌』『Continue』そして『アイデア』、こいつらの聴こえ方がまるで違う。『アイデア』『Continues』に至ってはミックスすらしていないらしいんすけど、明らかに聴こえ方がまったく別物だし、『恋』のこととかぶっちゃけ顔も見たくなかったんだけど、改めて聴いてみたらめちゃめちゃかわいくなっとるやんけ。こんな良い女だった??完全にゲーン!プリズムパワー!メークアップ!

これ、要は前の曲がめっちゃ遅いから次の曲がめちゃくちゃスピード速く聴こえるみたいな現象を利用してるんだと思うんですけど、アルバムの順番どおりに聴いてくとなんかもう「覚醒」します。どんどん聴覚が研ぎ澄まされるっていうか、ちょっと変化にすげぇ気づく。メインどころの音だけじゃなく、奥の奥で鳴ってるなんの音かもわからん音まではっきりと聴こえる。メイク変えた髪切ったネイル塗った、何食べたい何欲しい、仕事でミスした親とケンカした、全部気づく。『POP VIRUS』の前でだけは、俺めちゃくちゃデキる彼氏になってます。

  

そして一番おそろしいのが、この『POP VIRUS』がものすげぇアルバムであることは耳ある生物なら誰が聴いてもわかるんですけど、正直このアルバムって決して「売れ線」のアルバムじゃないと思うんだよ。初日の売上16万枚とかいうバケモンみたいな数字で、なんか普通にミスチルとかより売れちゃってますけど、いくら旬だっつってもちょっとこわくないですか??

星野源の作る音楽が日本で一番売れてるっていう事実、そしてそれを俺たちがなんの疑いもなく当たり前に受け入れてるっていうこと、それ自体が軽い「世にも奇妙な物語」。だって、6、7年前に『夢の外』ではじめて星野源のこと認識して自称音楽通の田島にその話したら、

「えっ?星野源って元々ソロじゃないよ??もしかしてSAKEROCKっていうバンド組んでたことも知らない???いや〜いま微妙でしょwww。普通にバンドの頃のほうが全然良かったからね〜〜〜。いや僕は大人計画の頃から星野源知ってるけどそもそもハマケンがペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラ」

みたいな、糞バエかお前?????っていうマウントの取られ方した記憶あるんだよ。逆に知らない人間は星野源のことなんか1ミリも知らねぇし。超絶極端。そういうサブカル御用達ポジションにいたと思ってたんですけど。そいつが今や天下のミスチルより円盤売れてるって、いったいなんですかこれは。おい田島、おまえ、息してっか?

 

そう、ここに星野源が『アイデア』以前まで「ど〜〜〜〜も〜〜〜〜!星野源で〜〜〜〜す!!」ってゲェ出るくらい自己紹介してた意味があると思ってて、それまでは「知る人ぞ知る」的なはじっこの方にいたはずの音楽をど真ん中に引っぱり出して、自分の好きな音楽やりたい音楽をより多くの人間に聴かせるため、言葉借りるなら「感染」させるために、まずはそれを体現する自分自身「星野源」って名前を全国民に知ってもらうって意味での自己紹介なんだと。スマホスクロールしたら下のほうにスゥ〜〜〜〜って出るエロ漫画の広告みたいにずっっっっと自分の身体使って営業かけて広告打ってたんだと。

星野源は「365日外で布団干し続ける奴」だって思ってるんですけど、1stアルバム『ばかのうた』から多少の音楽性の変化はあれど、根っこの部分は変わってなくて、この世のほとんどの絶望とほんの少しの希望を歌ってる、それがたんぽぽの川村エミコからもらったぶっといTENGAみたいにドンと星野源の中に一貫してあって、それを雨の日だろうが風の日だろうが呆れるくらいに続けてる。

だからこそ、色んなとこに移動してる「ヒット音楽の台風」があるとして、いまその台風が良い意味で一歩も動かずに布団干し続けた星野源のところにいるんだって思ったら、それって異常でも偶然でもないし、なんかすごい「人生おもしれぇな」ってアルバム聴いてて思った。

 


星野源 - Pop Virus【MV】/ Gen Hoshino - Pop Virus