今もしも一つだけ願いが叶うのなら「原嘉孝に当て馬役を演じてほしい」と答えたい。
断言する。原嘉孝は、確実に恋愛ドラマにおける「2番手」が似合うと。
ヒロインのことだけを一途に想うが、決して届くことはない。届いたとしても、叶わない。そんな役を今すぐ原嘉孝に演じてほしい。
原嘉孝という男に中津秀一、花沢類、中沢涼太、樋口拓也、夏川慎吾と同じ影を見てしまっている。「伝説の当て馬たち」の影を。
原嘉孝は、ヒロインのことを誰よりも理解し、想い続けている。ヒロインが泣いてる時はくだらない冗談で笑わせ、ヒロインが笑ってる時はガキみたいに喜ぶ。そんな男だ。
しかし、そんな原嘉孝の想いは、突然現れた「春の風のような男」に全てかっさわれてしまう。
一段一段、原嘉孝が大事に慎重に積み上げてきた恋愛ピラミッドが、風に吹かれて一瞬で崩される。
ヒロインはきっと、原嘉孝にこんな話をするだろう。
「もう!なんなのアイツ!ホンッット最悪!暗いしぶっきらぼうだし自分勝手だし人の話聞かないし適当だし女好きだし…それに比べて原は面白くて優しくて…ホンッッットに原のこと少しは見習えって感じだよね!そうそうこの前だって……」
などと、アイツの嫌いなところ100個言ってるヒロインを見ながら、原嘉孝は静かに悟るだろう。
(俺じゃない)
ずっと見てきたから。一番近くでヒロインのことを見てきたから「自分を好きにならない」ことを誰よりも早く気づいてしまうのが、原嘉孝という男なのだ…
原嘉孝に想いを寄せる女子もいる。ヒロインの親友だ。その女子もまた、原嘉孝がヒロインに片思いしているのを知っていながら
「あの子はアンタみたいなバカにもったいないわよ残念だったわね」
「うっせーよ。ほっとけバカ」
などといつも言い合っている。笑い合っている。でも、心では泣いてる。しかし、原嘉孝は親友の想いには逆に1ミリも気がついていない。原嘉孝の目にはヒロインしか映っていない。そういう男なのだ。そして親友は、そんな原嘉孝だから好きになったのだ。
ぜひ5話あたりで、主人公、ヒロイン、原、ヒロインの親友の4人で「ダブルデート」をしてもらいたい。
主人公とヒロインが口げんか(でもどこか楽しそう)をしているのを
(俺の前じゃ、あんな顔しない…)
とか思いながら少し遠くから寂しげな目で見つめててほしいし、原嘉孝のことを親友が見つめていてほしい。
9話では、主人公とすれ違い、大雨に打たれて泣いているヒロインに傘を差し出し抱き締めてほしい。そして思わず口から出てしまう、いつもの冗談じゃない、ガチの
「もう俺にしとけよ…」
を言ってほしい。
最終話では、夢を叶えるために海外に旅立とうとする主人公のところへ、ヒロインをバイクに乗せて送り届けてほしい。
「気持ち…伝えてこいよ。幸せにならなかったら…ぜってー許さねーからな!あ、結婚式は呼べよ?当然、ご祝儀は奢りで」
「…バカ!ありがと…」
「早く行けよ、お姫様」
などといつもと変わらない軽口を叩いてほしい。そして空港に走っていくヒロインの背中を見届けながら、NOSUKEばりに泣いてほしい。
…というドラマを経て、原嘉孝には満を持して「主演」を務めてほしい。「一直線恋愛バカ系の主人公」を…
できれば「身分違いの超お嬢様」(このとき原嘉孝はフリーターとする)、もしくは「魔性の詐欺師」(このとき原嘉孝は御曹司とする)に恋をしてもらいたい。
利用され、騙され、身も心もボロボロになるだろう。しかし原嘉孝は絶対に諦めない。6話あたりで彼女が撒いた種が原因で襲ってきた暴漢から彼女を守り、ボコボコにされてほしい。そして、血まみれの原嘉孝を見て
「どうして…?私、あなたをずっと騙してたのよ…?なんでここまで…」
などと泣きながら言う彼女に微笑みながら
「あなたが…どうしようもねぇくらいに…綺麗…だからっすかね…」
などと言ってほしい。
そして、その一途さにやられて終盤は逆に彼女の方が原嘉孝にベタ惚れしてほしい。でも原嘉孝は最後までそれにいっさい気が付かないでほしい。
…さらにそれを経て、原嘉孝には「物腰は柔らかく常に明るく誰に対しても優しい態度で接するが実は家族を奪われ復讐のためだけに生きる悲しき男」を演じてほしい。
復讐を果たすも、最後には計画の途中で崩壊させてしまった家族の息子に刺されてほしい。
呆然と立ち尽くすその息子のナイフを奪い、刺された腹部を自ら一突き、
「これは俺が自分で刺した…早く行けよ……行け!!!」
などと言って息子を逃がし、その場に倒れ込んでほしい。
降りしきる雪の中、
「やっと…やっと終われるよ…母さん」
などとつぶやきながら、片方の目から涙を流して息絶えてほしい。
ー
原嘉孝よ、当て馬の、いや俳優界の太陽になれ。