別冊マガジンで始まったテニス漫画『神様はラケットを振らない』
「不慮の事故に遭い、利き手が使えなくなり夢を諦めた天才テニス少年が、一人の少女と出会い純粋なその熱意に触れることで自身のテニスへの想いに気づき、再びテニスの道を歩き始める…」
っていう青春スポーツもの〜ありがち〜〜ってたかくくってたら、羊の皮被った悪魔ヘドロサスペンス展開でオシッコ漏らした。激甘パンケーキだと思って食ったら生地ハバネロでできてた。
表紙の煽り文から、
「罪と罰を問う異色スポーツ新連載」
いや問うな。テニスしろよ。裁判所じゃねぇんだから。
序盤から節々に感じるヘル臭。特に周りのキャラ付け…「自分のあこがれだから」って理由だけでやたらグイグイ来て主人公の事情も想いも知らねぇで「右手がダメなら左手でテニスやりませんか!?」「手助けをさせてほしい、テニスが私にとって人生の一部である限り」って言っちゃうすこぶる気味が悪い激ヤバヒロインとか、「主人公のことは全部知ってる風」の空気出してるのに「えっ、お前の両親亡くなったの?」とかシラこいて聞く魚目サイコ親友とか、たかだか19時の外出にLINE何件も送ってくるメンヘラじいちゃんとか、いろいろとクセが終わってるんですけど…
だから、こっちは読んでてずっと「えっ?なにコイツ絶対好きになれないんですけど?えっ?キモッ、ちょっ、だいじょうぶコレ?キャラ設定ミスってません?性格デフォルメしすぎじゃないですか?駆け足で話進めすぎじゃないですか?もうちょっと構成とか練ってから…」って心配してたのに、ラスト1ページで全部合点いった…俺は思い違いをしてた…全部間違ってた…この世界はなにもかもが壊れてやがる…おそらく登場人物全員「正気じゃねぇ」…
『神様はラケットを振らない』はキラキラしたヒロインと傷抱えた主人公の恋愛漫画でも、サウスポーとして覚醒していく天才テニスプレイヤーの無双漫画でもなんでもなく、本当に煽り通り「罪と罰を問う漫画」…ある意味「テニヌ」…
この漫画の何がゲボ出るって、1話の時点で「どっちにでも振れることができる」ってことで、青春寄りにしてもいいし、サスペンス寄りにしてもいい。このラスト読んじゃったらこれから先、読者は1ページたりとも気が抜けない、全てのシーンで深読み縦読みしかできないし、なんでもねぇ描写やセリフにも「裏」を「思惑」を探っちゃう。術中にはまった俺たちはオヨオヨと指をくわえながらページをめくるだけ…
これからの話の展開によって光か闇、天国か地獄、どっちに転ぶかまったくわかんないのが本当に怖い。普通に主人公とヒロインがお互いの傷を癒やしながら成長&恋愛していく王道キュンキュン群像劇になっていくかもしれないし、逆にいっさいテニスしないでヒロインが主人公の心を少しずつ破壊してくパラサイト〜半地下の漫画〜になるかもしれない。
しかも、1話で少しテニス描写があるんですが、とてもこれからスポーツ漫画やっていこうって描き方じゃねぇ…躍動感もなければ迫力もない、完全にテニス出汁にして「人間の業」描こうとしてるのがすっごい透けて見えるんですが……
というわけで、この最高にイカレがもしパラサイト化して人気も爆発したときには、ぜひ映像化お願いしますポン・ジュノ監督…