Tver無料配信中の『いちばんすき花』のスピンオフドラマを観たんですが、藤井風の主題歌ですら浄化できないモンスターが誕生していた。
一人でラーメン屋でいる齋藤飛鳥演じる多部未華子の妹「このみ」に、泉澤祐希演じる今田美桜の同僚「相良」が声をかけるのだが、開口一番
「おねえさん、ひとりですか?」
えっ、きしょっ、キショッッッッッ〜〜〜〜〜〜〜!!!!
知らんおねえさんに「おねえさんひとりですか?」って声かけていいのはこの世でただ一人、野原しんのすけだけ。にも関わらず、
「おねえさん、ひとりですか?」
あまりにもキショすぎる。仮に俺がこのみなら、食ってるラーメンぜんぶ鼻から吐き出して白目を剥いて失神してるだろう。しかし、そんな相良に対し、このみは
「二人です。彼のこと見えませんか?」(誰もいない隣の席を指さしながら)
と「バケモンにはバケモンをぶつけんだよ」と言わんばかりにヤバい奴を演じ、相良を無視しようとする。
が、われわれの想像を超えたキモンスターはまるで意に介すことなく
相良「おねえさん面白いですね…最近失恋しちゃったんですよ、話聞いてくれません?」
このみ「嫌です」
相良「職場の同僚で…凄い可愛い子で…」
と話を続ける。
恐ろしいまでのキショさ。星の数ほどいるキショい人間の中で、間違いなくトップクラス。キショの中のキショ。キング・オブ・キショ、「キショ王」がここに爆誕した。
この一瞬のやりとりだけで、ドラマを見ていなくてもコイツがどういう人間なのか、すべて理解できるだろう。
しかし、コイツのキショさはこんなものではない。
このみ「人の話聞かないからフラレたんだと思いますよ」
相良「イイ感じだったんですよ。仕事終わりに二人で飲みに行って、これイケるな、確実にイケるなって雰囲気あって、なのに普通に帰るって言い出して、家来ていいよ?って言ってんのに電車で帰るって言い出して、はぁ〜…帰らせましたよ…俺もそんな強引なことはしたくないんでね…」
このみ「勘違いしてただけじゃん?」
相良「これってどっちが悪いと思います?勘違いしたほうですかね?いやいや、思わせぶりなほうにも問題あるでしょ?」
このみ「思わせぶりって?」
相良「二人で飲みに行ったんですよ」
このみ「で?」
相良「楽しそうに笑ってました。好きな男にしか見せないような顔で笑ってました」
このみ「都合良い解釈すんなよ」
相良「え?え、だって好きじゃない男と二人で飲みに行きます?」
このみ「友達なら行くんじゃない」
相良「でたよ…友達って…都合良い言葉だよ…」
なんということだ。
一方的に話しているように見せかけて、絶妙に自分の情報をコントロールし、相手に興味を引かせるように仕向けているのが分かるだろうか。もはや憎悪を超えて尊敬に値するレベルのコミュニケーション能力。
すると、どうだろう。最初はただあしらっていただけのこのみが、気がつけば会話に参加している…
相良「すんごいカワイイ子で」
このみ「聞いたわ」
相良「カワイイから好きっていうワケではなくて。健気なんですよ。真面目で、努力家で。上からも可愛がられて、下からも慕われて。でもそのぶん嫉妬に苦しむっていう…」
このみ「へぇ…」
相良「そういう健気な子が好きだったんですけどね…フラレたショックで、お前なんて顔が良いだけだろ。なんて言い放ってしまいました」
このみ「最低だな…」
相良「だって、いきなり彼氏登場して!でもあいつ絶対彼氏じゃないと思うんですよ!」
このみ「めんどくせぇな…」
相良「相良くんは友達だと思ってたって。ないだろ!男と女なんだから友達なワケないだろ!」
このみ「そんなの人それぞれでしょ」
相良「おねえさんいます?男友達」
このみ「いない。あー、けどおねえちゃんにはいる」
ここッッッ!!!
「男と女なんだから友達なワケないだろ!」という極論を言うことによって、相手が意見を言いたくなるように誘導し、まんまと反応したところで「おねえさんいます?男友達?」に質問をする。
その結果、このみは自然に「自分には男友達はいないが、姉がいて、姉にも男友達がいる」という重要なプライベート情報を相良に差し出してしまっているのだ…
そして、少しずつこのみの人となりを知ったところで相良は、満を持して「問い」を投げかける。
相良「仮に、仮にですよ?おねえさんは、どんな条件なら男と友達になれます?」
このみ「まず恋愛対象じゃなくて」
相良「それまず第一条件ですね」
このみ「んー、二人で会えて。ほらゴハンとか」
相良「あー、ゴハン行けるの大事ですね」
このみ「あとはまぁ、やっぱあれかな?気使わない人?こう、逆にヤなことも言えちゃう感じ。お前それ違うぞーとか。そういうの言えちゃう感じの?」
相良「大事っすね。友達ですからね」
このみ「あと恋愛相談とかできて」
相良「わかる!異性だからこそ的確なアドバイスがね、分かる!」
このみ「そう!こうオシャレなお店とかじゃなくて、きったないラーメン屋さんとかも行けて」
相良「あーはいはい、前々から約束してたんじゃなくて、急に今ヒマ?みたいな感じで会えて!」
このみ「あーそれそれ!化粧落としちゃったけど、まいっか!みたいな!」
相良「分かるー、大事っすねーそういうの」
このみ「基本人間と苦手だから、こう、スムーズに会話できるだけでかなり友達かな…そういう男の人いたら、かなり友達になれるかも」
相良「なるほど…おねえさんカワイイなと思って声かけたんですけど」
このみ「どうも…」
相良「話してみたら全然タイプの感じじゃなかったです」
このみ「それは良かったです。一安心です」
(ラーメンをすする2人)
相良「(笑)まって?なんか俺、友達の条件クリアしてません?」
このみ「…ごちそうさまでした」
(店を出ていくこのみ)
名前を聞くことも、連絡先を交換することもなく、2人は別れる。
前半の過剰すぎる「自己開示」からの後半の不自然なまでの「共感」。完全に詐欺師の手口。お前は今すぐクロサギになれ。
しかもキショ王・相良の恐ろしさはそれを計算ではなく「天然」でやっているということ…天はなんという力をコイツに与えてしまったのか。その力を少しは良い方向に活かすことはできなかったのか…?
そして結果としてこのみは、まんまと
(アイツ…意外と気が合うジャン…?エッ…もしかしてウチら、イイ関係になれそ…?)
という、まんざらでもなさそうな顔をして物語は終わる。
このみ…悪いことは言わねぇ…絶対にもう相良とは会うな…もう二度とあのラーメン屋に行くな…だまされるな…
いや、俺も口出しとかしたくないですよ?もしかしたら2人は「友達」になるかもしれないですよ。だが、いいですか?中盤で相良が言ったセリフを、もう一度思い出してみてください。
「ないだろ!男と女なんだから友達なワケないだろ!」
ない。コイツの中に「男女の友情」など1ミリも存在しない。仮にコイツと友達になったとして、コイツはこのみのことを「あわよくばいこう」とするのは確定してる…相良はこれからあのラーメン屋に通いつめるだろう…偶然を装い、何度もだ…その結果、どうなると思う?
男「は?あいつ全然タイプじゃねえし!恋愛とか絶対ないから!」
女「えー?ないない!あいつと付き合うくらいなら死んだほうがマシ!」
高校の同級生のハヤトとカオリ…元同僚のコウジとアヤカ…友達とか言ってた2人が気づいたらめちゃくちゃ結婚してたパターンを、俺は死ぬほど知ってんだよ…どうせこの2人も友達とかふざいてても最終的には…チュチュウフフを…く、クソが
相良をゆるすな