『横綱』ってご存知ですか。
写真なくて申し訳ないんですけど、お菓子です。「ひねり揚げ」「ひねり棒」と言ったほうがわかりやすいかもしれません。イモムシのようなカタチをしたサクサクとした塩味のスナック菓子のことです。あれがたまらなく美味い。スナック菓子の中ではダントツで一番好きだ。コストパフォーマンスがとても高く、コンビニなんかに行くと100円前後の低価格にも関わらず、約100グラムという大容量で売られている。これぞ真のソウルフード。まさにking of snack food。「やめられない、とまらない」という言葉は横綱にこそ相応しい。
ザクッ、ザクッ。一度横綱を口に入れれば我々は本能の赴くままに食するしかない。ザクッ、ザクッ。思わず笑みが溢れる。少し濃い目の味付けがなんともたまらない。力強さを感じつつもそれでいてどこか上品。先ほど横綱のカタチを「イモムシ」と喩えたが、相撲取りが締める綱をモチーフにしているという。そして名の通り、横綱の塩味はまさに力士達たちの流した汗、努力の結晶。ザクッ、ザクッ。 目を閉じれば浮かび上がる情景。序の口から始まり先輩力士のきつい扱きに必死で耐え、序二段、三段目と一段一段幕内力士への階段を駆け上がっていく。そんな力士の姿。
ブチッ、ブチッ。一粒一粒が口の中で弾け、暴れだし、どこまでも広がっていく。フワフワと身体が宙に浮くような感覚のあと、全身を裂くような刺激が襲いかかる。鋭利な刃物のように五感が研ぎ澄まされ、ドーパミンが体内で急速に分泌される。身に触れる空気にさえ過敏になる。血が湧き肉が躍り、細胞の一つひとつが覚醒する。自分が自分でなくなっていくような恐怖、同時に感じる言い知れぬ高揚感。怖い楽しい怖い楽しい怖い楽しい怖い怖い怖い。刺激は食べる毎に増していき、一つ、また一つ、こうなってしまうとまるでブレーキの壊れたバイクのようにもう決して止められない。止められるはずがない。横綱が底をつくか、俺の息の根が止まるかのどちらか。究極のナイフエッジデスマッチ。やめたい。助けて。