「お前すごい顔色だな、デスラーか?」
昔、会社の上司にこう言われたんですよ。
その日は二日酔いで体調終わってて顔色が最悪でそれを差してのことだったんですけど、俺はその「デスラー」とかいう奴のことを1ミリも知らなかったので、思わず
「……はぁ?(なにコイツ知らねぇつまんねぇこと言ってんだ?)」
と返したらしこたまブチギレられました。
後になって「デスラー」というのはアニメ『宇宙戦艦ヤマト』に登場するキャラクターだと言うことがわかったんですが、今思えばその場で即座に返すことのできなかった自分を本当に殺したい。実際その「例え」が上手いとか下手とか面白いつまらないは別として
「コイツなんも知らねぇんだな」
と思われたのがゲロ程悔しい。それがキッカケで今では「例え超敏感体質」になり「知らない例えされたら負け」「知らないイコール死」の精神が染み付き、相手にも踏み絵みたいに例えを振るようになりました。そのせいでウザがられて周りから人がどんどん離れていくのにやめられないんですよ。
「例え」って日常会話で使うのはギャンブルに近くて、
「唐揚げに勝手にレモンかけるようなマネすんな」
とか日常生活で誰もが経験する「あるある」から来る例えだったらいいんですけど、音楽や映画やドラマやアニメや漫画やゲームみたいな「コンテンツ」の例えになると性別、世代、環境、その他あらゆる要素諸々によって個人差がエゲツなくて下手に使うと地獄空気製造マシーンに成り果てるじゃないですか。
例えば、バッティングセンターに行ったらイスに縛り付けられてバッターボックスに放置されてる人がいたとして、隣で打ってる中学生に
「アウトレイジビヨンドの加瀬亮じゃねぇかよ」
って言っても伝わらないし、恐らくほぼ100%の中学生がアウトレイジビヨンド観てないじゃないですか。
バラエティ観ない人に「挨拶ちゃんとしろよオールスター感謝祭で島田紳助にブチギレられた東京03かよ」って言ってもどっか行かれるだけですし、ゲームあんまやってない人に「頭踏まれた時の驚き方スーパードンキーコングの1面のボスノーティかよ」って言っても白目剥かれるだけですし、ドラマ観ない人に「足し算できなさすぎるだろ古畑任三郎対SMAPの香取慎吾かよ」って言っても縁切られるだけですし、漫画読まない人に「笑ってたと思ったら急にキレるとかるろ剣の宇水かよ」とかって言ってもノド掻っ切られるだけですし、音楽聴かない人に「今日のお前の髪型のトリッキーさ三浦大知3rdアルバムD.Mのジャケ写みたいだな」って言ってもEXCITEされるだけですし、アニメ観ない人に「いつも元気なのになんでそんな切ない顔してんだよドラゴンボールEDのロマンティックあげるよのブルマかよ」とか「目のクマどうしたんだよペテルギウスロマネコンティかよ」って言ってもゲロ吐かれるだけ。
相手が知ってる知らないかそんなもん見極める観察力も話術もねぇし本当は「例え」なんて素人がやる必要ないんですけど、逆に言うとその例えがガッツリハマった時の相手との仲良くなる速度ってマジで光で、人生で唯一「親友」って呼びたい奴がいるんですけど、今言った例えほぼ全部打ち返してくれるんですよ。ノーティって言ったら目ン玉見開いて「ヴゲェ…ヴゲェ…ヴゲェ…」って3回やってくれるし、古畑SMAPって言ったらラストの戸田恵子みたいにゆっくりお辞儀してくれる。大好きすぎていつかアイツのこと思い出してきっと泣いてしまう同じ墓入りたい。
1年位前の『ワイドナショー』でEXITの兼近が
「(お笑い芸人は)中堅層がずっとテレビ出てたんすよ最近まで。だから若いコたちはそのお笑いしか見れないんでお笑い界が廃れてった感じがすごいして。僕の代って初めて舞台立ったらお客さんは2人とかしかいなかったんですよ。お笑いライブにお客さんがまず来ない。その理由ってやっぱり活躍してる芸人たちが例えるのがドラゴンボールだったりするからなんですよ。昔の芸能人の名前とかプロレスとかマジ意味わかんなかった」
とか言ってたんですけど、確かに一理あるし、冒頭で俺が上司のデスラーに対して「はぁ?」って返したように知らねぇ話、わかんねぇ例えに対して拒否反応起こす気持ちはわからんでもない一方で
「うるせぇ知らねぇお前が悪いんだよggrks」
と思う俺もいて、それこそ芸人のラジオとか聴いてても「誰がわかるんだよ」みたいな例えバンバン使うじゃないですか。
ただ、知らない話を面白そうに話してる芸人最高だしそれ聴いてこっちも知らなかったら勉強すれば次からはもっと面白くなるし、もしその例えが自分にとって100%ハマったらその芸人のこと例える前の100億倍好きになって有り金全部つぎ込みたくなる。
最近で言うと、『マヂカルラブリーのオールナイトニッポン0』のOPでかかる選曲が3週で魔法陣グルグルOPED「晴れてハレルヤ」「Wind Climbing~風にあそばれて」忍空ED「それでも明日がやってくる」だったのプラス、トランクスが生まれた時期のブルマの髪型の話で「ドラクエⅣの女勇者みたいな髪型」とか例えてて脳汁ドバドバの世代ド真ん中でその瞬間俺は「ヂ…一生ついてく…」と誓いました。