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アニメ『オッドタクシー』がかいけつゾロリの皮かぶった宮部みゆき

f:id:ikdhkr:20210706180050j:plainAmazon.co.jp: オッドタクシー | Prime Video

Amazonプライムでアニメ『オッドタクシー』観終わったんですが、あの、話が違う。俺は『かいけつゾロリ』みたいなアニメだと思ってたんですが…

 

舞台は動物たちが暮らす東京。

セイウチでタクシー運転手の小戸川(花江夏樹)、ゴリラで医者の剛力(木村良平)、テナガザルで清掃員の柿花(山口勝平)、アルパカで看護師の白川(飯田里穂)、イノシシとキリンでお笑いコンビの柴垣と馬場(ダイアン)、カバでYoutuberの樺沢(トレンディエンジェルたかし)、地下アイドルでトイプードルの二階堂(三森すずこ)、双子のミーアキャットで警察官の大門(ミキ)…

一匹のタクシー運転手と、ちょっと変わった客たちが織りなすテンポの良い会話劇。ひねくれ屋だけど人の良い小戸川が客たちの悩みや秘密と触れ合い解決していく一話完結モノの珍道中ほのぼのギャグアニメかぁ…と思ってたら、内蔵えぐり出されてメチャクチャにされました。ふざけるな…「すべてのもんだいはおならでかいけつ!」じゃなく全ての問題は金と暴力で隠蔽でした。

 

1話冒頭、女子高生の失踪事件が起こり疑いが小戸川にかけられるところから物語は始まるんですが、その時点で「ただのほのぼのアニメじゃねぇ」っていうのは確かにありました。いやでも、言っても「『ぼのぼの』ぐらいのシュールさとダークさだろ」と舐めてたんですよ。だって絵柄がほぼゾロリだったので…

バラバラだった物語が徐々に線と線で結ばれていき、複雑に絡み合い、最終的に音を立ててちぎれるさまをひたすら見せられる20分13話。動物の愛らしさと会話のテンポの軽妙さで覆い隠してますけど、やってることは宮部みゆき、湊かなえ、東野圭吾となんにも変わらねぇ。これ間違って子供が観たらどうすんだ?4話で精神崩壊してかいけつゾロリどころか睡眠障害で充血ギョロリだろ。早く金曜10時枠で実写化してほしい。

 

そもそも「動物が人間の格好して人間の言葉を話し人間の社会のような生活を送る」設定は太古の昔からあって『かいけつゾロリ』しかり、最近でも『アフリカのサラリーマン』や『BEASTARS』みたいに獣性と人間性を上手くミックスさせて独自の世界観を生み出している作品は大量に存在するじゃないですか。

それと比べると『オッドタクシー』が「動物の姿である必然性」って限りなく薄く見えるんですよ。「かわいいから毒が薄まる」以外にほとんど機能してない。100日後に死ぬワニがワニである意味くらい薄い。言ったら「人間が動物の姿をしているだけ」そう思ってました。そして殺されました。私が全部間違ってました。

 

ここまで書くと勘のいいガキは色々気づくと思うんですが、これが『オッドタクシー』の核でデカいフリ、その中に小さいフリが所狭しと敷き詰められてる。目の前で人体切断マジックしながら同時にトランプのすり替えとコイン増やしやってる。後半「なぜ動物の姿でなくてはいけないのか」が徐々に明らかになり、隠されていた「全て」の謎が解けた時、なにひとつわかってなかった自分のアホさ加減に怒りパソコンブッ壊しそうになった。

俺はコンテンツに触れすぎて動物が動物の姿形で人間の生活を送る世界をなんの違和感もなく受け入れて、ただ「そういうもの」として認識してしまっていたんだと。『オッドタクシー』はファンタジー、フィクションを大量摂取しすぎて「しゃべる動物」に慣れきった俺の手をひねってボキボキに折ってきやがった。俺は悪くない…俺がオッドタクシーをなんの疑いもなく信じてたのはなにもかもマキバオーのせい。

とにかく頭からつま先まで「話が上手い」、謎や伏線がちゃんと何気ないシーンの節々にわかる人間だけわかる絶妙のラインで散りばめれてました。

「なんで白か黒で答えるという難題を突きつけるんだよミスチルか」

「We Are the Worldのブルース・スプリングスティーンより唐突だな」

この時点で気づくべきでした。この世界におけるミスチルってなんだよ、と。俺はアホみたいに口開けて鼻水たらしながら何も考えず観てたので後半の後半までいっさいなにもわかってなかったんですが、全話終わった後にまた1話オープニングから見返したら「全部言ってるし全部描いてる…」と腑に落ち続けました。底なしの腑。「どこで気づいたか」の話題だけで来年の朝まで酒飲める。

そして物語のもうひとつの核「失踪事件」。これに関しては、劇中で起こることが怒涛すぎて途中事件があったことすら忘れそうになるんですが、文字通り「死角から突然首絞められた」感覚になった。そいつに気づいた瞬間に泡吹いて白目剥いて気絶しました。マジで一生関わりたくない。

 

間違いなく近年でも大傑作、さっき「実写化しろ」とか言いましたけど絶対に無理。『銀牙 -流れ星 銀』が実写化するくらい無理。「アニメでやる意味」がめちゃくちゃ詰まってました。

ただ問題はこの作品、人にオススメするときにどういうテンションで薦めればいいかまったくわかりません。絵やキャラで惹きつけるアニメじゃないし、あんまりネタバレすると面白さがゼロどころかゲロになりますし、ここまで書いておいて言うのもなんですが、話知らないで観たほうが絶対に面白い、かと言って「ほのぼのシュール動物アニメです」って話しても興味ない人間はまず見ない。

だから、脚本は全話『セトウツミ』の脚本家・此元和津也が手掛けてるよ、スカートとPUNPEEの主題歌とOMSB、VaVaの劇伴がトブほどオシャレだよ、花江夏樹の普段やってるキャラとのテンションの落差に脳バグるよ、芸人声優はそこまで違和感ないと思うから大丈夫だよダイアン津田は上手いよユースケはユースケだよ、みたいな細かい部分で興味持たせるしかない。なので、最後に一番食いつき良さそうなポイントを言って終わります。

 

山口勝平が最高の山口勝平をやってる