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地獄テーマパーク、星野源『Cube』感想

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パッと見ディズニーランドなのに中に入ったらイカつい鬼が金棒ブン回してる、みたいなのは星野源の必勝パターンなんですが、そのギャップを極限まで高めたのが『Cube』でした。

頭おかしくなるほど賑やかメロディの中に詰め込まれた地獄。着ぐるみとかキャラクターの置物って昼間に見るとハッピーで楽しい気持ちになりますけど、夜に見るとめちゃくちゃ怖いじゃないですか。薬局に置いてある人形とか閉店後の真っ暗な店内にあるとただのデスマシーンにしか見えないですし、夜道に「佐伯ポインティ」があのはじけるような笑顔で立ってたらたぶん怖すぎて漏らす。それです。

 

ポップの隠れ蓑を引き裂いたホラー、ディズニーに完全無許可で撮影した映画『エスケイプ・フロム・トゥモロー』観た時と全く同じ。リメイク版『Cube』の予告映像で流れた時の「ぜ…全然合ってねぇ…」とフルで歌詞読みながら聴いたあとの「こ…これだ…」のギャップが激しすぎて脳が破裂しかけた。

そりゃあ予告で流れる15秒足らずじゃ伝わらないし掴みきれるはずありませんでした。確実に良くも悪くもCMで流すような曲じゃないんですよ。なんならなんの予告もなしに映画館で初解禁、くらいがちょうどいい。「めちゃくちゃ固いスルメ」を主題歌って立場を使ってあえて作ってる気さえする。まるで死のエレクトリカルパレード、ミッキーとジョーカーが仲良く手つないで踊ってらぁ。

人間では再現不可能な爆速BPMとグッチャグチャのすこぶる気持ち悪い変則リズムパターンで『Cube』っていうワケわからん空間にいきなり閉じ込められて理不尽な死を待つだけの状況をワケのわからないメロディそのもので表現して「ただそこにある絶望」を鳴らしてる。「この曲に希望を込めてない」って星野源本人が言ってたように、人生そのものがCubeとなんも変わらないってことを痛いほど伝えてくる。

「箱がただ球になっただけだ」

で「星野源が何を描こうとしていたのか」「これが主題歌である理由」の尻尾の先の先がやっと見えてくる。むしろ徹底して希望を歌わないからこそ希望がある。死を意識することで生にしがみつく、「それ」を身近に感じた人間にしか書けない曲。

だから歌詞すらろくに読まないで上辺だけなんとなくで聴いて「なんだこれ全然合ってねぇ…ポップすぎるだろ」とつぶやくイコール「頭上にあるトゲだらけの天井がちょっとずつ下がってる」ってことだと、星野源っていうデスゲーム主催者の掌で転がされてることだと早く気がついてくれ…

俺はこの曲を聴いてもはや星野源に対して「恐怖」以外の感情失った。リピート再生で聴くとわかるんですが、最初の一発目聴いた時いつまで経っても曲終わらねぇから、

「いや、、、曲、、な、、長ぇ〜〜〜!?!!?永遠!!!?!?!

って叫びながらスマホ見たら「3周目」でした。

どこから始まってどこで終わってるのかまったくわからない。途中で停止ボタン押させない曲そのものの中毒性と相まって「あのッッ!?星野さんッッッ!?!?ど、どこで止めればいいんですか!?!?!?」って頭バグってきて、しばらく「俺の耳をちぎるか」「スマホをブッ壊すか」の究極の二択してた。曲の余白がゼロ。聴くファイナル・デッドコースターかよ。

しかも曲制作の話で、

「なんで人間に合わせなきゃいけないんだ」

「人を生み出したい」

「千手観音みたいな手が6本くらいあって足が4本くらいあるドラマー」

鋼の錬金術師の話してます…?

 

冒頭で書いたように「わくわくアトラクションだー!」つってはしゃぎながら乗ったときにはもうヤバいガスが回ってる。それでも楽しいからやめられない止められない地獄かっぱえびせん。リピートで聴くことで徐々に全身が侵される幸せな毒。一度ハマっちまったら「星野源」って名前の箱からは逃れられないんだと思って俺は諦めました。もう星野源に抗うな…

Cube

Cube

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