「お前はこれから死ぬまで一つのドラマの1話しか観ることができない」と言われたら、絶対に『古畑任三郎 VS SMAP』を選ぶくらい愛してるドラマなんですが、同時にこういう役を他のアイドルグループにも演じてほしいと本当に願ってる。
SMAPの草彅剛はコンサートスタッフの冨樫(宇梶剛士)に脅迫される。以前から冨樫が草彅を脅していることを知ってるメンバーの中居正広、木村拓哉、稲垣吾郎、香取慎吾らは、コンサート会場で富樫の殺害する巧妙な完全犯罪を画策。
それぞれの個性を生かした芝居を打ちながら、冨樫を亡き者にする計画を遂に実行する。そして彼らのコンサートが始まろうとした時、冨樫が死体となって発見された。
捜査を担当する古畑任三郎は今泉、西園寺とともはSMAPの証言やアリバイの矛盾を探し出し、巧みに組み立てられた完全犯罪の仕掛けを暴こうと全面対決に挑む…
あらすじの全文字が興奮の材料。まず「アイドルグループが完全犯罪を画策」の時点で脳汁で溺れ死。好きなグループがいる人間なら一度は妄想して爆発する設定、それを実際に映像として味わえるという奇跡…さらにあらすじには書かれてないが、
「SMAPは全員同じ孤児院の出身」
コジッッッッッッ!!!!????「孤児院」設定はあまりにも卑怯すぎるだろ三谷ィ…しかも「一人のメンバーを守るために」という理由…仲間を傷つけるは何があろうと許さないという強い意思…確実にファンを皆殺しにきている…こんなものは死ぬ間際の夢。これを「SMAP」が「実名」で「本人役」としてやるヤバさがわかるか?
木村拓哉が草彅剛に対して「お前が苦しい、だから俺たちも苦しい、それでいいじゃねぇか」と言っていましたが、俺が死んだ後、絶対にこのセリフを墓に刻み込みたい。
終盤の独白シーン、古畑はSMAPの特徴を
「責任感の強い彼か…
悩める青年か…
個人主義の彼か…
一見お調子者のムードメーカーか…
それとも…挑戦的なこの男か…」
と説明するんですが、このセリフだけでだいたい誰のことを言ってるのか日本国民のほぼ全員が理解できる。SMAPというグループがいかにとんでもねぇ5人だったかが一瞬でわかってしまう。しかも、この「三谷幸喜の考えたSMAP」の性格が完全にハリウッドザコシショウのやる「誇張したSMAP」
「責任感の強い彼」こと、中居正広は、現実の100倍自己犠牲心が強く、古畑に殺人がバレそうになると、独断で全部一人で罪かぶろうとしちゃう。好きなセリフは
「悪いけどあんた…地獄に落ちるよォ…」
「個人主義の彼」こと稲垣吾郎は、現実の100倍かわいそうで、一人だけアリバイ作りの負担がデカイのにダンスの振り付け急に変えられたり、一人でいる時間が多いせいでキムタクに裏切り者扱いされてガチギレされちゃう。好きなセリフは
「言ったろ…?僕だってSMAPの一員だ…」
「ムードメーカーの彼」こと香取慎吾は、現実の100倍アホで、現場にうっかり指紋残しちゃったり、2ケタの算数ができなくてバカにされちゃう。好きなセリフは
「なんでそうやってリーダーぶるんだよ…そんなことして俺らが黙ってるってなんで思うかな…」
「挑戦的な男」こと木村拓哉は、現実の100倍調子乗りで「仲間を守るため」って根底はありつつも一人だけ「完全犯罪とかマジ面白そう」的なノリでやってるから後半ほぼ勝手に自白しちゃう。好きなセリフは
「まぁその後は…ステージが待ってるから…ブリッといきましょ?」
「悩める青年」こと草彅剛に至っては、マジでただの悩める青年。とにかくメンタルが激弱で、絶対にアリバイ作らなきゃいけない役なのになんか勝手に犯行について全部台無しにしちゃう。好きなセリフは
「みんな…ありがとう…」
全員本物よりも100倍アホで未熟でかわいい…この絶妙なリアリティとフィクションのバランスが最高で、俺はSMAPのライブを観るたびに「裏で誰か殺ってから来たんじゃ…?」と思うようになってしまいました。
そんな誇張したSMAPの完全犯罪計画は、実際やってみるとボロだらけで「絶対に犯行に参加しちゃいけない剛が勝手についてくる」っていう、スタート時点から失敗してるコブクロの君が代みたいな状況。
そのせいで、剛は犯人に肩掴まれて腕上がらないくらいのケガするわ、『青いイナズマ』の振り付けを変えなきゃいけなくなるわ、剛のアリバイ作りのために適当言わなきゃいけなくなるわと滅茶苦茶なんですよ。
しかも、相手は一瞬でも目つけられたら逮捕確定の「古畑任三郎」。相手が最も嫌がるタイミングでわざと現れたり、不自然に距離つめてきたり、明らかに分かってる当たり前の事実をわざわざ相手に言わせたり、決定的な証拠を出させるためにあえて泳がせたり、犯人が気の毒になるほど徹底的に精神攻撃してくる悪魔。
そんな古畑にかかればSMAPにボロを出させることなどイージーモードで、事実を隠すために嘘をついて、さらにその嘘を隠すためにまたひとつ別の嘘をついて…と、どんどん泥沼にハマっていく…
この「犯人へのダル絡み」こそ古畑の一番面白い部分なんですが、これを好きなグループにやられたときの感情、マジで天国と地獄です。SMAPの苦しむ姿を見ながら1秒ごとに、
「…お願い…もうやめて…とっくにSMAPのライフはゼロよ…もう勝負はついたのよ…」
と泣いてる俺と、
「ヒヒヒィ……いいぞォ…もっとやれ古畑ァ…もっとSMAPを追い詰めてやれェ…その表情こそが俺のなによりの栄養になるゥ…」
とニヤつく俺が交互に出てくる。その顔、完全にただの変質者。古畑今すぐ俺を逮捕してくれ…
ぜひ一度『古畑任三郎 VS SMAP』観て、SMAPのヤバさを体感するとともに、好きなグループが本人役で犯人やってる妄想をしてみてください。お察しします。