King Gnuの新曲『硝子窓』を聴きましたか?すぐに聴いてください。いや、絶対に聴くな。
早く何らかの形で規制したほうがいい。俺の中でVinyl、It's a small world、傘を超えてぶっちぎり1位になってしまった。もうだめだ。狂ってしまう。いくらなんでもエロすぎる。
30過ぎた俺ですらこんなんなってるのに、18歳未満のお子ちゃまが聴いたら絶対に耳溶けて無くなる。変態ビデオ屋の、のれんの奥でだけ販売しろ。
言っておきますが、歌詞の内容が下ネタ、とかそういう低俗なアホの話ではありません。俺は「概念」の話をしています。
この曲を作る全ての要素が「エロ」で出来ているのです。そもそも『硝子窓』というタイトルを見てみろ。漢字ってえっちですよね。
ファァアアッァアアーーーーーーン…フェッ…フェッ…フェッ…フェッ…フェッ…フェッ…フェッ…フェッ…フェッ…フアッァアアアアアーーーーーーーー……!ティリリリィイイイイーーー!
チュクチュケチュケチュクチュ…
どこの交響楽団かと錯覚するほど厚みのある弦楽器の厳かな音色からの、人を酔い狂わせるダンスクラブを連想させるスクラッチ音。決して交わることのない音が交わる。禁断の出会い。
King Gnuというバンドは、白いワンピースを着た少女の儚く神秘的な雰囲気と、スラム街のならず者の荒々しく退廃的な雰囲気が完璧に共存しているのだが、開始10秒でそれが分かる。「これはKing Gnuの曲です」ということが誰の耳にも明らかになる。
そして一気に曲の世界観が開け、20秒の地点で「プルルル…」という着信音のような音が聴こえ「な、なにが始まるんだ…?」と、鳥になりながら動揺していると、
井口理「ねえ…」
一言目から「優勝」の文字が我々の脳内を埋め尽くす。「ね」と「え」、まるで井口理が歌うためだけに生まれたこの2文字。
これを聴いた瞬間、私は本当の意味で全ての「言葉」を失ってしまいました。もう一生しゃべりたくない。自分が今まで発してきた言葉に対して、本当に申し訳ない。俺じゃなく井口理の口から出たかったはずだろ…?ごめん、ごめんな…俺の言葉たち…俺だって本当は井口理みたいな美しい声で外に出してあげたかったよ…
と、自分の運命を呪ってしまうほど井口理の発する一音一音、そのすべてが異常にエロすぎる。男声でも女声でもない、井口声としか例えようがない、内蔵を直接触られているかのようなゾッとするほどに甘く切ないウィスパーボイス。少しメロディよりも遅れぎみに歌っているのだが聴くFANZA。
「お願いこの手を牽き寄せェ…幸せの向こう側まで連れてってよォォ…」
そこに重なるヴォコーダーを使ったコーラスが入ることで静のエロさと動のエロさが一つになるのだ。そして優しく脈打つピアノとドラムが雨音のように鼓膜を刺激し、運命の悪戯のようなバイオリンと波のように揺れるベースが全身に絡みつく。切ないのに腰が振れてしまう、まるで罪を犯してしまうかのような危い妖艶さにちんちんが爆発してしまった。
次に「人称」に注目したい。
「張り裂けそうな時 亡くした言葉を何時だってあなたは探し出してくれた」
ここまでは紛れもなく「わたし」の心情を歌っているのだが…
「心の軋む音を奏でて乾いた痛みの数を数えて僕等は大人に成ってゆくものよだから泣かないでくれよハニー」
僕等!?!?!?!?!?!
いつから視点が「わたし」から「僕」になっていた?…あまりにも自然に主と従が変わっている…なんという歌詞の上手さ…しかもここであえてクサい台詞である「ハニー」を入れることで「僕」がどういう人間なのかが一瞬で理解してしまう。常田大希とはすなわち「愛の男」。早く抱きしめてほしい。
そして何度も聴くと井口理の声が「わたし」と「僕」視点によって微妙に声色を変えていることが分かった。「わたし」の時はほんの少し儚く壊れそうな声で、「僕」の時はほんの少し包み込むような声で、一曲の中で細かく演じ分けていたのだ…恐ろしいほどの声の演技力…生まれ変わったら井口理の子供として誕生し、絵本を読み聞かせしてほしい。
曲が進むにつれ感情の起伏のように上下する新井和輝のベースも、欲しい時間に欲しい場所に的確に突いてくる勢喜遊のドラムも「あなた」にすがる「わたし」の心を、全ての音と言葉で表現している。1ミリもこんな経験などしたことがないのに、まぎれもなく「この曲は俺の話」だった。人生が塗り替えられてしまった。俺がKing Gnuの曲になった瞬間だった。
さらに1番のサビが終わってからの展開がヤバい。普通の曲なら「2番のAメロ」から始まるが、その「普通」を破壊するのがKing Gnuなのだ…メロディに慣れたところでいきなりブチ込まれる謎のCメロ、その破壊力がたるや
「誰かが決めた宿命や
変えられない運命の中で
生き抜く意味を探し続けたい
弱さは負けじゃない
壊れたら直せばいいよ
誰もが一悪を以って歪さ笑って」
「2023年優し歌詞」大賞受賞おめでとうございます
「この曲を作ってくれてありがとう…」という言葉しか出ない。いつも常田大希先輩の書く歌詞は「生きること」を認めてくれる。俺が背負った悲しき運命、呪われた血、犯した罪すらも全て受け入れてくれる。
「こんな俺も…生きてていいんすか…?」と涙が流れる。産まれた瞬間の赤ちゃん以来の純度100の綺麗な涙が
ア・ナ・タ・ハ・ワ・タ・シ・デェ…
ド・コ・マ・デ・モ…チ・ガ・ッ・テェ…
ア・ナ・タ・ハ・ワ・タ・シ・デェ…
イ・ビ・ツ・ソ・ノ・マ・マ・デェ…
そして間髪入れずに来る常田大希のパート…完全に「あなた」と「わたし」が交わり、ひとつに合体していた…エロすぎる。そして訪れるクライマックス。いいですか
「ねえ……
お願い…この手を牽き寄せェ…誰も知らない街まで連れてってよォオ……
群像ゥ…劇が孕むミステリーをォ…愛したァアアイ…独りではァ成り立たなァァアぃ……
煩わしきィ…
愛おしきィ…
この世ァァァアアアアアアアアアアアアアアアアア界ィイイイイイイイイイ……
…
ネエ…オネガイハイウェイヲトバシテェ…
カナシミノムコウガワマデツレテッテヨォ…
キョウダケハァ…スベテニイトメハツケナイノォ…
ガラスマドニウツルアナタハワタシィ…
他人事ではァ…居られないあなたはわたしィ……」
まるで脳みそをストローでかき回され、吸われるような感覚。こんな曲を生み出して俺をどうするつもりなんだ。誰かKing Gnuを止めてくれ、いや止めないでくれ。