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アンビリーバブルクレイジーシンガーソングライター藤井風の人生を追体験できるVRアルバム『Prema』感想

藤井風の音楽を聴いてると冬の夜に古い喫茶店の窓際でコーヒーの湯気と遠くの街灯の光を眺めてるみたいな人生の小さな瞬間と果てしない宇宙の広大さが交錯するような気分になる。

何言ってるか自分でもわからないですが…

日常の何気ない一瞬と永遠に続く何か大きなものがなんの無理もなく重なり合う。

そんな意味不明すぎる感覚を藤井風はいつも俺に味わわせてくるんですが『Prema』で完全にそれを超えてきた。

 

タイトル『Prema』はサンスクリット語で「無条件の愛、神聖な愛」という意味らしい。藤井風が歌う愛は恋愛や友情を超えて「存在そのもの」を抱きしめるようなスケール感があるのに、地元の友達と駄菓子屋の前で缶ジュース片手に語り合うような親しみやすさが同居してる。

初めて通して聴いた時、頭に浮かんだのは「愛ってこんなに壮大なのに、なんでこんなに手の届くところにあるんだ?」って感覚だった。最初は

 

「いや全編英語とかなんでだよ…もう岡山弁ゴリゴリで歌ってくれねぇのかよ…『肥溜め』とか『青さ粉』とかもう歌ってくれねぇのかよ…なぁ…風…」

 

ド田舎の幼馴染が急に海外に引っ越しちまった…みたいな少し寂しい気持ちになったんですが、その不安は一瞬で吹き飛んだ。

藤井風の声を聴けば、音を聴けば、心の奥にスッと染み込んでくる。アルバム全体が、喪失や痛みから始まって、再会や永遠の愛へと向かう旅みたいな流れになってる。インナー同窓会だった。インナー同窓会ってなに?

説明したい。例えば、リード曲「Hachikō」忠犬ハチ公の物語をモチーフに、死後の再会を歌った曲。歌詞の

Where you go, Hachikō? I'm comin' with you
Through the stars, we'll find our way back home

ってフレーズが、別れの切なさを優しいメロディーで希望に変えてくる。藤井風の声がちょっと掠れる瞬間に胸の奥に温かい灯りがともるうな感覚。日常の忠誠心みたいな身近さと、魂の永遠性が一緒に響いてくる。

「Love Like This」はこの曲は、狂った世界で苦しむ中、唯一無二の愛に出会う物語なんですけど、

I'll never find another love like this, it's true
Baby, can you feel it too just like I do?

ストレートな表現なのに藤井風が歌うと全然陳腐じゃなくなる。ハスキーでシルクのスカーフみたいに滑らかで、耳から心の芯までスルッと滑り込んでくるあの声。

この愛で救われる感覚がまるで夜中の公園で友達と「人生って何だろな」って語るような気軽さで伝わってくる。英語詞のおかげで、世界中の誰にでも届く響きがあるのにちゃんと藤井風の人間味が残ってる。心のガードが完璧に突破された。

 

全体を通して聴くと『Prema』のサウンドの相変わらずバケモン具合がイヤでも伝わってくる。プロデューサーが韓国の250に変わったことでK-POP的なシャープなビートと重低音が効いてるんだけど藤井風のトレードマークみたいな「隙間」はちゃんと残ってる。

分厚いアレンジなのに、どこかフワッとした空間があってその隙間が、聴いてる俺の心を自由に漂わせてくれる。80年代ポップスやマイケル・ジャクソンを彷彿とさせるムードがアルバム全体をキラキラさせてる。

冒頭の「Casket Girl」はファンキーなリズムと狂気と執着の歌詞のアンバランスさがポップなメロディーで強制的に腰を振らせてくる。ニュー・ジャック・スウィング風の「I Need U Back」は情熱を失った日々からエネルギーを取り戻したいって願いが綺羅びやかなビートで爆発する快曲。歌詞の

I need you back, bring the fire in my soul

が燃え尽きてた俺の心に火をつけてくる。表題曲「Prema」はアルバムのど真ん中で輝くスピリチュアルな核。

Prema, don't you know that you are love itself
You are love itself, Prema, can't you see that you are god itself

愛と神性をストレートに歌ってるのに決して押しつけがましくない。ピアノのシンプルな響きと遠くで漂うストリングスが夜の湖に月光が反射してるみたいな静かで広がりを見せてくる。この隙間が俺の心をどこか遠くへ連れてく。

無いはずの「藤井風との記憶」が捏造される。俺は藤井風と岡山の浜辺で海を見ながらで朝まで夢と愛について語り明かしたことがあります。

「It Ain’t Over」はソウルフルなバラードで別れじゃなく魂の再会を信じる優しいメロディー。「You」はシンプルなのに心を鷲づかみにしてくる。「Okay, Goodbye」は執着を手放す爽快感が軽やかなリズムで弾ける。最後の「Forever Young」は、魂の永遠性を讃えるフィナーレ。肉体を超えた若さが温かいハーモニーで響く。

アルバム全体がもはや心の瞑想旅行。そして同時にアンビリーバブルクレイジーシンガーソングライター藤井風の人生を追体験できるような「VR藤井風アルバム」だった。何を考え、何を信じて生きているのか、天才の心の奥底に少し触れられる、とんでもないハイヤーセルフアルバムが誕生してしまった。

 

『Prema』って100年後も誰かが聴いて「愛って、こういうことか…」って胸打たれるんじゃないかって思うんですよ。

聴き終えた後、俺は全てに感謝していた。ありがとう藤井風を育ててくれた藤井風に関わる全ての人間たちよ、藤井風の父よ、藤井風の母よ、藤井家を反映させた藤井の始祖よありがとう、藤井風を育ててくれたあらゆる生きとし生ける生物ありがとう。

水ありがとう、米ありがとう、小麦ありがとう、野菜ありがとう、大地、地球、宇宙ありがとう。森羅万象ありがとう。藤井風ありがとう。俺ありがとう。

Prema (初回盤)(2枚組)

Prema (初回盤)(2枚組)

  • アーティスト:藤井 風
  • UNIVERSAL MUSIC GROUP
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